The Mummy (1932)
Director:カール・フロイント
Cast:ボリス・カーロフ / ジタ・ジョハーン / エドワード・ヴァン・スローン / デビッド・マナーズ
Production Company:ユニヴァーサル
前年の『フランケンシュタイン』(1931)で一躍怪奇俳優としての地位を不動のものとした、ボリス・カーロフがミイラに扮する怪奇映画。
全身を腐敗した包帯で巻かれた、ジャック・ピアースの手によるカーロフのメイクのおどろおどろしさ、そのカーロフが徐々に眼を開き動き出す演出、それを目撃した若者が発狂する様等、全盛期のユニヴァーサルの素晴らしさが随所に見られる傑作である。が、残念なことに、全身を包帯で包んだいわゆる「ミイラ」は映画前半の数分間しか登場しない。中盤以降のカーロフは、3000年の眠りより蘇生し、顔に無数の皺のメイクを施した状態で作品は展開されていく。
物語は1921年のイギリス調査団によって発掘された高僧のミイラが、共に埋葬されていた禁断の巻物により甦ることから始まる。このミイラは、3000年前に病死した王女アンケスナモンを生き返らせようとした高僧イン・ホ・テップであり、禁断の書トートの巻物を盗んだ罰として生きたままミイラとされていたのである。イン・ホ・テップは王女アンケスナモンの生き写しであるヘレンと出会い、死を超越した愛を求め、ヘレンの体にアンケスナモンの魂を呼び戻そうとする。
そう、この物語は怪奇映画ではあるものの、全体としては儚い悲恋映画なのである。後年にハマー・フィルムがクリストファー・リーを主演に制作した『ミイラの幽霊』(1959)でリーが包帯を巻いたままの姿で激しく暴れまわるのと比較すると、本作『ミイラ再生』(1932)のカーロフは古典的で大人しいと言わざるを得ない。甦ったイン・ホ・テップも呪詛により人間を死に至らしめたり、操るだけと静的な立ち回りしか見せず、若干の物足りなさが残る。
棺で眠るカーロフのミイラのメイクが素晴らしいだけに、このミイラの姿でもっと暴れてくれたらならば!と、考えてしまうのは怪奇映画を愛する者の悲しい性であるやもしれぬが、ユニヴァーサルが生み出したオリジナルのモンスターであるミイラものの原点。古典的価値も併せ、十分に観る価値を有する作品である。
amazonでこの映画を検索