Danza Macabra (1964)
Director:アントニオ・マルゲリーティ
Cast:バーバラ・スティール / ジョルジュ・リヴィエール / マルガレーテ・ローブサーム / アルトゥーロ・ドミニチ
Production Company:ERAチネマトグラフィカ
『血ぬられた墓標』(1960)の魔女アーサを演じたバーバラ・スティールと、その愛人ヤヴティッチを演じたアルトゥーロ・ドミニチが再び共演した、日本の『雨月物語』の「蛇性の婬」にも似た幽霊譚。陰影の強いモノクロの映像でゴシックなムードに満ち溢れた作品である。
怪奇小説作家エドガー・アラン・ポオを取材しにやってきたアランは、酒場の会話の成り行きでポオと同席していたブラックウッド卿の城で一晩を明かす賭けに応じることとなる。ブラックウッド卿の城は生きて出てきた者がいないのだと言う。霊的な存在を信じないアランはそれを一笑に付し城へと乗り込むが、誰もいないはずの城で彼は美しく情熱的な美女エリザベスと出会い、恋に落ちるのであった。
狂気の天才作家ポオ自身が登場するという突飛な冒頭が愉快であるが、そこに同席しているのがアルジャーノン・ブラックウッドを念頭においているのであろうブラックウッド卿というのも中々痛快。また、幽霊達による劇中劇で自らが死に至った状況が再現されるという趣向も非常に面白い。ただその劇中劇が3度に渡って繰り返されるため、ややテンポが悪いのは否めない。しかし、それがまた幽玄的な雰囲気を生み出していることも事実である。
なお本作は、マルゲリーティ自身の手によって後に『蜘蛛の巣』(1971)としてほぼ同じ演出のままカラーでリメイクされており、ポオ役をクラウス・キンスキーが演じている。このリメイク版は、バーバラ・スティールの不在という点も大きいが、色彩が付いただけでここまでムードがなくなるものかという出来栄えであった。やはり陰影の強いモノクロの映像というのは、それだけで観る者の想像力を強く刺激する大切な要素なのである。
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