The Wolf Man (1941)
Director:ジョージ・ワグナー
Cast:ロン・チャニー・Jr. / クロード・レインズ / マリア・アウスペンスカヤ / ベラ・ルゴシ
Production Company:ユニヴァーサル
ユニヴァーサルとしては『倫敦の人狼』(1935)に続く狼男ものの2作目であり、民間信仰を超えて狼男の設定を確立し以降の狼男映画に多大なる影響を与えた金字塔的作品。現在一般に知れ渡っている狼男は銀に弱いという設定は、民間信仰ではなくこの映画によって生み出されたものであり、『フランケンシュタイン』(1931)同様にユニヴァーサルが大衆へのイメージの普及を行った作品である。
英国の貴族であるタルボット家に、次男ローレンス・タルボットが18年振りにアメリカから帰郷してくる。ある日、彼は街にやってきたジプシーのキャンプを訪れるが、そこで狼に襲われ偶然手にしていた銀のステッキで狼を打ち殺すも、噛みつかれ怪我を負ってしまう。ところが翌朝その現場で発見されたのは狼の死体ではなく、ジプシーの占い師の死体であった。やがてタルボットの体に異変が起こり始める・・・。
フランケンシュタインの怪物を始めとして数多くのユニヴァーサル・モンスターを生み出したメイク師ジャック・ピアースの手による狼男のメイクは、『倫敦の人狼』の際の控えめなメイクとは異なり6時間にも渡るメイクを施し、顔全体をヤクの毛で覆ったデザインとされた。この強烈なインパクトに助けられ、ロン・チャニー・Jr.はその演技力の不足を補って一躍怪奇俳優としての地位を確立する。彼は以降のユニヴァーサルにおける狼男の全てを演じ、苦悩とも泣き顔ともつかぬその情けない顔は狼男ローレンス・タルボットという役柄と共に我々怪奇映画ファンの記憶に永遠に留められることとなったのである。
本作以降狼男は、そのキャラクター性が既知のものとして強調されていくのであるが、『狼男』(1941)では以降の作品では描かれることがなくなったタルボットが狼男と化した経緯や、彼自身の高まりゆく疑念と苦悩が丁寧に描かれている。まさに、狼男の悲劇的存在は意識せぬ殺人というところにある、ということを明確に打ち出した優れた脚本と言えるだろう。また、自らの子供を殺されながらも、その犠牲者となり同じ運命を辿るタルボットの面倒をみようとするジプシーの老婆や、科学を信奉する厳格な父親の存在等、主役を支える脇役達の演技の質も高い。偉大なる父親の不肖な息子の代表作にして、ユニヴァーサル・モンスターを代表する狼男映画の古典。
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