The Curse of the Werewolf (1961)
Director:テレンス・フィッシャー
Cast:オリバー・リード / クリフォード・エバンス / イヴォンヌ・ロメイン / リチャード・ワーズワース
Production Company:ハマー
往年のユニヴァーサル・モンスターを次々とカラーで銀幕に復活させたハマー・フィルムが制作した唯一の狼男映画。シリーズ化されなかった原因は定かではないが、やはり狼男は怪物へと変貌してしまう人間の苦悩や悲しみが主軸となる傾向にあるため、当時のハマーの方向性からして狼男は題材としてはやや扱いづらかったのかもしれない。
『吸血狼男』(1961)はしばしば雑誌等で、主役の狼男の出演シーンが短いことや、そこに至るまでの物語の長さや冒頭の回想部分の矛盾が指摘され、ハマー初期の作品の中では賛否両論な評価が下っていることが多い。確かにそれらの指摘はもっともであるし、ハマーにしては珍しく怪物が前面に出ていないのではあるが、それでもなお私はこの『吸血狼男』がテレンス・フィッシャー監督の傑作の一つであると考えている。
確かに本作品は怪奇映画でありながら、主軸はオリバー・リード演ずるレオンの悲恋物語風に展開するため、多少の肩透かしをくらうことは必須である。しかし、それだけ待たされた分、リードの狼男ぶりは凄まじい。特に本作品の狼男のメイクは『倫敦の人狼』(1935)のヘンリー・ハルのような中途半端なメイクでもなく、狼男を当たり役としたロン・チャニー・Jr.の毛むくじゃらでもこっとしたメイクでもなく、非常に凶悪な面構えで、かつてない程の暴れっぷりを披露しているのである。まあ、演じた本人の顔が元からいかついということもあろうが、私は数ある狼男の映画の中でこの『吸血狼男』のメイクが最も素晴らしいと思う。
個人的にはこのメイクが非常に気に入っているため、ハマーの狼男が一作品で留まったことは残念でならないが、ドラキュラ・シリーズの後期の没落を見る限りでは、かえって安直なシリーズ化されなかったことが結果的にはよかったのかもしれない。
ちなみに、ハマー・フィルムの脚本家であるアンソニー・ハインズは、ハマー、アミカスと並ぶイギリスの怪奇映画制作会社、タイバーン・プロでピーター・カッシング出演の『娼婦と狼男』(1975)という狼男映画の脚本も執筆している。
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