The Thing from Another World (1951)
Director:クリスチャン・ナイビー
Cast:マーガレット・シェリダン / ケネス・トビー / ロバート・コーンスウェイト / ダグラス・スペンサー
Production Company:RKO
ジョン・W・キャンベル・Jr.の短編小説「影が行く」を原作とした侵略SF映画の古典的名作。西部劇等で娯楽性を重視したテンポのよい演出を得意とした名匠ハワード・ホークスによる製作で、実態的にはホークスは監督の大半も行ったとされている。後に、ジョン・カーペンターによって『遊星からの物体X』(1982)としてより原作に近い形でリメイクもされた。
北極に謎の物体が落下し、ヘンドリー大尉は部下達と共に落下地点へと向かい、垂直尾翼と思しき一部を除いて氷に埋もれた円盤を発見する。操縦者と見られる物体を氷ごと掘り起こし基地に持ち帰る一行であったが、倉庫に運び込まれた氷が手違いで溶けその生物は外の犬を殺し逃走してしまう。研究所のキャリントン博士は犬に噛みちぎられ残されていた腕から、その生物は植物のような組織から成る生物で、動物の血を吸って成長する生物であることを突き止める。やがて、その生物が人間の血を求めて研究所へと戻って来る。
原作の舞台である南極をわざわざ北極へと変更した背景には、当時の冷戦事情でソ連を連想させる意図があったためとされる。さらに原作では他の生物に寄生し姿を変える事ができた物体Xを、単純な人型の怪物としたことで、ロシア人を連想させる結果を生み出した。こうした、宇宙人による侵略の恐怖と共産主義を重ねる手法は、当時の『ボディ・スナッチャー 恐怖の街』(1956)や『光る眼』(1960)にも見られる傾向である。
しかし、そんな小難しい歴史的背景を知らずとも楽しませるのがハワード・ホークスの娯楽演出。男達は皆男らしく自らの使命と役割を軽口を叩きながら忠実に遂行し、女達はそんな男達を軽くあしらいながらも好意を寄せる。古き良き西部劇のノリそのもので展開される本作は、良くも悪くもテンポやノリが軽すぎるが故に、怪奇映画的な閉塞感や恐怖感を薄める結果となってしまっている。
氷の下の物体を把握するために、人がそれぞれ散って円盤の形状を描き出す演出や、後に『エイリアン』(1979)シリーズでも効果的に使われることになる、ガイガー・カウンターによって近づいて来る相手の位置を補足するという演出は抜群の効果をあげている。にも関わらず本作が「古典」の地位に甘んじているのは、ホークス的男女描写のスタイルが、現代のそれと照らし合わせるとやや古臭いがためではないだろうか。
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