Return of the Fly (1959)
Director:エドワーズ・L・バーンズ
Cast:ヴィンセント・プライス / ブレット・ハルシー / ジョン・サットン / デイビッド・フランカム
Production Company:20世紀フォックス
子供の頃、怪奇映画の大百科を眺めてはその物語を想像し独り恐怖に打ち震えていた私にとって、見るのも怖かったスチール写真が幾つかあった。その内の一つが本作『蝿男の逆襲』(1959)のこのスチール写真である。巨大な蝿の頭と腕を持つ蝿男のその姿には、有無を言わさぬ直感的で生理的な恐怖のイメージがあった。
天才科学者アンドレの悲劇的な事件から数年の月日が流れた。アンドレの息子であるフィリップは、叔父のフランソワが反対する中、父の果たせなかった志である物質転送実験を再開させる。転送された物質が巨大化するという問題を抱えながらも、フィリップの実験は転送に成功する。しかし、実験の助手を務めていたアランの裏切りによりフィリップは蝿と共に転送されてしまうのであった・・・。
本作は傑作『蝿男の恐怖』(1958)の続編なのであるが、「続編は初作を越えられない」という定説を哀しいほどに守っている。前作で見られた秀逸な脚本や演出は露ほども見られず、蝿男を産み出すために無理矢理作られたとしか思えぬ御都合主義な物語、無理のある人物設定、平凡な演出と、何とも凡庸な出来にがっかりさせられる。
子供の私を酷く怯えさせた肝心の蝿男も、流石にこの歳になってしまうと気味は悪いものの張りぼてにしか見えず、むしろ滑稽にすら見える。純真な子供の心を失ってしまった今の私にとって、本作との再会は何とも哀しくむなしいものとなった。たった一枚のスチール写真によって、怯えることのできた幼き日の私は、もういないのであった・・・。
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