The Plague of the Zombies (1966)
Director:ジョン・ギリング
Cast:アンドレ・モレル / ダイアン・クレア / ジョン・カーソン / ジャクリーン・ピアース
Production Company:ハマー
ハマー・フィルムが生み出した異色のゾンビ映画。今でこそゾンビと言えば、ジョージ・A・ロメロが描いたような、自ら意思を持ったカニバリズムのゾンビが一般的となってはいるが、本作のゾンビは『ホワイト・ゾンビ』(1932)同様にブゥードゥー教の呪術によって労働に従事させられる死体として描かれている。
イギリスの片田舎で若い村人が相次いで死亡するという、謎の疫病が流行する。村の医師ピーターの依頼で村を訪れたフォーブス教授と娘のシルヴィアは早速調査に乗り出すが、奇怪なことに疫病で死んだ者達の墓はもぬけの殻だった・・・。
墓場から土を押し上げ甦るゾンビ達の悪夢的なイメージ。おどろおどろしく響く太鼓のリズム。不気味なことこの上ないゾンビ達の荒いメイク。と、なかなか怪奇映画のハマーらしく手堅い作りの作品であるが、どうも小粒な印象は免れない。『ホワイト・ゾンビ』が恐怖の主体をゾンビそのものではなくそれを操るベラ・ルゴシ演ずる魔人に焦点を絞っていたのに対し、『吸血ゾンビ』(1966)は悪役にリーやカッシングといった魅力的な俳優が配されているわけでもなく、また折角のインパクトを持ったゾンビ達もただうろうろするだけで、恐怖の主体があいまいでどっちつかずなのが最大の原因であろうか。
また、脚本自体も非常に慌しい内容で、フォーブス教授はいつ体を休めているのか?と不思議に思うほど忙しく調査に立ち回る。これはテンポの良さを売りにしたテレンス・フィッシャーの小気味良い演出とは微妙に似て非なるものであるように思われる。いくら怪奇映画の黄金時代を築き上げたハマーとは言え、やはり60年代半ば以降の作品には低調な作品が多く、本作も佳作の粋を出るものではない。スプラッタ的などろどろぐちょぐちょなメイクのゾンビではなく、いかにも怪奇映画然とした異様なメイクのゾンビ達は一見の価値があると言えるが、逆に言えばそれだけしか見るべき点はない作品。
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