The Reptile (1966)
Director:ジョン・ギリング
Cast:ノエル・ウィルマン / レイ・バレット / ジャクリーン・ピアース / ジェニファー・ダニエル
Production Company:ハマー
とにかくこのスチール写真を観て欲しい。私が子供の頃、ケイブンシャの大百科シリーズで見たこの『蛇女の脅怖』(1966)のスチール写真は、有無を言わさぬ怖さがあった。物語の筋など知ろうはずも無く、映画そのものを観たことがなくとも、この蛇女こそ、子供の頃の私をひどく怯えさせたトラウマ・ヒロインである。
兄の突然の死によってコーンウォール地方の屋敷を相続したハリーは、その死に疑問を持ちながら妻のヴァレリーと共に屋敷を訪れる。村では「黒死病」と呼ばれる不審な病魔が相次いでおり、犠牲者は口から泡を吹き、肌が黒ずみ苦しみ悶え死んでいく。酒場の主人と共に調査を進めるハリーは、やがてその犠牲者達の首筋に一様に噛跡があることを知り、その死に様はキングコブラに噛まれた者達と非常に酷似することに気が付くのであった。
本作は長らく国内盤が発売されなかったため、私は幼少時の恐怖を追い求め輸入盤を入手してまで蛇女との再会を果たした。しかし、ジョン・ギリング監督によるサスペンス色の強いドラマ展開はなかなか蛇女を見せずにやきもきさせる。スチール写真ですら子供を怯えあがらせるに充分であった蛇女は一体どのような登場をするのか?期待と不安が入り混じる中やがて物語は佳境に差し掛かり、ようやく蛇女の全身ショットが画面に映し出される。ヒロインのヴァレリーに襲いかかる蛇女!さあ、始まるぞ!とその時、助けに来た酒場の主人が窓を割り、冷たい外気が部屋に流れ込んだ。寒さに弱い蛇女は"It's cold"と呟くや否や、その場に崩れ落ちるのであった・・・。
こうして、長らく追い求めてきた私の永遠のトラウマ・ヒロインとの再会は凄まじい脱力のうちに幕を閉じた。サスペンス色を高めた演出は非常に手堅く、脚本もハマーとしては矛盾がなくしっかりとしており、愛想の悪い酒場の主人を演ずることの多いマイケル・リッパーが珍しく善玉を演じているという点はマニアならば充分楽しめる。しかし、子供の私にあれだけの恐怖を植え付けたスチール写真を上回る恐怖はそこにはなかった。『妖女ゴーゴン』(1964)にも言える事であるが、ハマーの女怪物ものはどうも扱いがうまくなく、その凄まじい外見のインパクトを活かしきれてないのが残念でならない。それでもなお、メイクで覆われた仮面の中で舌をちろちろと動かすといった細かい演出を見せる蛇女は、やはり永遠のトラウマ・ヒロインなのである。
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