The Mummy (1959)
Director:テレンス・フィッシャー
Cast:ピーター・カッシング / クリストファー・リー / イヴォンヌ・フルノー / レイモンド・ハントリー
Production Company:ハマー
ボリス・カーロフ主演の『ミイラ再生』(1932)にはじまるユニヴァーサルの一連のミイラ・シリーズを総括した位置付けに当たるハマー・フィルムのリメイク作品。ハマー・カラーと呼ばれる独特の色彩がついたことでエジプトの回想シーンがけばけばしくなり、ユニヴァーサルにあった夢物語的な儚さが失われてしまったことは残念極まりないが、その分暴れ回るミイラがとにかく圧巻の作品である。
ミイラ男カリスを演ずるは、勿論クリストファー・リー。格子をぶち破り、銃弾をもものともしないその怪物振りは、姿形は違えどもフランケンシュタインの怪物そのものであり、『ミイラ再生』で包帯姿のままのカーロフが暴れてくれたなら!という我々の欲求をまさに満たすものであると言えよう。
しかし、長身でスマートなリーの動きはユニヴァーサルのミイラ・シリーズに比較して余りにしなやかに過ぎ、数千年の眠りから覚めたミイラと言うにはやや説得力に欠ける。また、眼を中心としてリーの表情がはっきりと読み取れる顔のメイクは、ジャック・ピアースが生み出したユニヴァーサルのそれに比べ好みが大きく分かれるところでもある。私としては体格やメイク、その動き等を含めミイラ男のイメージとしてはロン・チャニー・Jr.の演じたものがベストと考えるが、いかんせん彼がミイラ男を演じた作品はどれも低予算で内容が伴わないものばかりであるため総合的な評価としては甲乙つけ難いところである。
1960年代に突入すると一気にその演出手腕に陰りを見せる監督テレンス・フィッシャーも本作ではまだ小気味良い演出を見せており、カッシングとリーの共演もあって本作は充分に見ごたえのある作品であることは確かと言える。また、やや「個性的」な顔立ちの女優が多い初期ハマー作品の中にあって本作のヒロインであるイヴォンヌ・フルノーは極めて優雅で美しく、出演シーンがわずかでありながらも見事な存在感を放っている。カリスが数千年の時を超え、彼女を攫いたくなるのも頷けよう・・・というものである。
amazonでこの映画を検索