Taste the Blood of Dracula (1970)
Director:ピーター・サスディ
Cast:クリストファー・リー / ラルフ・ベイツ / リンダ・ヘイドン / アンソニー・コーラン
Production Company:ハマー
ハマー・フィルムが制作したクリストファー・リー主演ドラキュラ・シリーズ第4作目。前作『帰ってきたドラキュラ』(1968)のラストシーンを流用することで、話に連続性を持たせた続編的な位置付けの作品である。が、ドラキュラが十字架に突き刺さり血の涙を流すというやや滑稽な前作のシーンが流用されていることからも分かる通り、本作はハマーのドラキュラ・シリーズの中でも下から数えた方が早い駄作である。
まずドラキュラの復活からして情けない。本作のドラキュラは、娼婦館で豪遊する裕福な三人の親父達の余興によって復活する。そして復活したドラキュラは、復活の儀式の際に死んだ下僕の復讐をこの三人の親父達にすることを誓う。随分とちんまりとした「おはなし」である。しかも復活したドラキュラは自ら積極的に動くことをせず、三人の親父の子供達を操ることでその父親を殺害させることに執心する。確かに操られた子供による親殺し、というのはショッキングではあるかもしれないが、ドラキュラ映画としてはこの展開は失格と言わざるをえない。我々はリーのドラキュラの活躍が見たくてこの映画を見ているのであって、突っ立ったままのリーなどは期待していないのである。
さらに、ドラキュラ映画はドラキュラの滅び方も一つの「見せ場」であるわけだが、本作のドラキュラは何と唐突に自滅する。追い詰められたドラキュラは、廃墟と化した教会が往年の輝きを持って神々しく光り輝く幻影と賛美歌の幻聴に苦しめられた挙句、勝手に落下して果てる。
この何ともお粗末な『ドラキュラ血の味』(1970)は、本作以降のハマーのドラキュラ・シリーズが話に連続性を持たせることをやめた理由がよく分かる、展開に行き詰まったシリーズのなれの果てである。いくらリーの演技が素晴らしかろうと、いくらリーのドラキュラが魅力的であろうと、それだけでは素晴らしい映画とはならないことを露呈した作品、それこそが本作と言えよう。
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