Frankenstein and the Monster from Hell (1974)
Director:テレンス・フィッシャー
Cast:ピーター・カッシング / シェーン・ブライアント / マデリン・スミス / デヴィッド・プラウズ
Production Company:ハマー
ハマー・フィルムが制作したフランケンシュタイン・シリーズ第7弾にして最終作。前作『フランケンシュタインの恐怖』(1970)がラルフ・ベイツ主演のパロディ的作品であったためピーター・カッシング演ずるシリーズとしては『フランケンシュタイン恐怖の生体実験』(1969)に続く作品であるが、焼け死んだはずのフランケンシュタイン博士が両手に火傷を負ってはいるものの、何故か健在であるのは御愛嬌。
フランケンシュタインの研究に魅せられ、人造人間を創る研究をしていた若い医師サイモンが墓を暴いた罪で精神病院に投獄される。ところがその精神病院では、以前同じ罪により投獄されていたフランケンシュタイン博士が院長を脅し主治医としての地位を得て、自らの研究を進めていた。火傷を負い感覚のなくなった両手のため外科手術が思うように進まぬフランケンシュタインはサイモンを助手に、新たなる人造人間の創造に乗り出すのだった。
ボリス・カーロフ主演の『恐怖の精神病院』(1946)を思わせる陰鬱な精神病院を舞台に、閉ざされた空間で精神病院患者達を実験台に生命創造に情熱を燃やすフランケンシュタインのマッド・ドクターぶりはシリーズ中最も冷酷で救いがない。モラルを遥かに超越したその姿勢はモンスターは創造された怪物ではなくフランケンシュタイン博士その人であることを明確に物語っており、カッシングの青い瞳に宿る知性と狂気を主軸にしていたハマーのフランケンシュタイン・シリーズの真骨頂と言えよう。
とは言え、創造された怪物が人間の体を使っているという設定にも関わらず、まるでゴリラか何かのような、あまりに着ぐるみ然とした(中で演ずるはデヴィッド・プラウズ、ダースベイダーの「中の」役者である)ものであるため、世間での評判はあまり良くはない作品ではある。しかし全編を覆う陰鬱な色彩、カッシングの突き抜けた演技、そして私が後期ハマーの俳優陣では最も好きなシェーン・ブライアント、『バンパイア・ラヴァーズ』(1970)の時よりも数段美しくなっているマデリン・スミスらが出演してるため、個人的には大好きな映画である。邦題のあまりにセンスのないタイトルに・・・いや、原題も同じではあるのだが・・・躊躇せず機会があったならば見て頂けたらと思う。
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