Dracula (1979)
Director:ジョン・バダム
Cast:フランク・ランジェラ / ローレンス・オリヴィエ / ケイト・ネリガン / ドナルド・プレザンス
Production Company:ユニヴァーサル
『魔人ドラキュラ』(1931)が、当時ブロードウェイでヒットしていたハミルトン・ディーンの脚本を元に、舞台でドラキュラを演じていたベラ・ルゴシを主演に迎えて映画化したのと同様に、1970年代後半に再びブロードウェイでヒットしていた演劇をユニヴァーサルが映画化した作品。本作でドラキュラを演ずるは、舞台でドラキュラを演じていた二枚目俳優フランク・ランジェラである。
本作『ドラキュラ』(1979)は原作と比較すると人物関係が大幅に変更されており、ミーナはヘルシング教授の娘へ、ルーシーはセワード博士の娘となっている。ジョナサン・ハーカーはルーシーの婚約者となり、さらにはミーナとルーシーの人物像は原作ままに役回りを入れ替え。何ともコンパクトに纏めた印象ではあるが、ここまで原作と微妙に似て非なる設定となっていると、逆に原作既読者は混乱するように思われてならない。
そして何よりも本作の大きな特徴となっているのは、ラブ・ロマンスを主軸に据えている点である。濃厚に怪奇的雰囲気を漂わせるルゴシとも、貴族的な立振舞の中にも荒々しさを兼ね備えていたクリストファー・リーとも異なって、本作のランジェラは甘いマスクでロマンティックかつ優雅。何とヒロインのルーシーの心を婚約者ハーカーから奪い去るという展開を見せるのである。
しかし、ルーシーを演ずるケイト・ネリガンは当時既に29歳。しかも、困ったことに私の好みのタイプでもない。かくして、私は怪奇映画としての魅力を本作に見出すこともできず、ヒロインの美しさに魅せられることもなく、ただただ退屈しながらこの映画を観たのであった。しかしそれから十数年後、『ナインスゲート』(1999)で年老いて余りに変わり果てたランジェラの姿に、私は腰を抜かす程ビックリすることになる。今となっては二枚目であった頃のランジェラの雄姿を拝めるという点でのみ、価値を見出すことの出来る正統派ドラキュラ映画屈指の駄作。
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