Necronomicon (1993)
Director:クリストフ・ガンズ / 金子修介 / ブライアン・ユズナ
Cast:ジェフリー・コムズ / ブルース・ペイン / デビッド・ワーナー / ドン・カルファ
Production Company:デービス
何故『ネクロノミコン』じゃなくて『ネクロノミカン』(1993)なわけ?とラヴクラフト・ファンとしては怒り心頭な邦題ではあるが、ラヴクラフトの「壁の中の鼠」「冷気」「闇に囁くもの」を日米のそれぞれの新進気鋭の監督が映画化したオムニバス作品。丸顔のジェフリー・コムズが特殊メイクによって顔の長いラヴクラフトその人に扮し、各話を繋ぐストーリー・テラーとして登場する。
「壁の中の鼠」では、デラポア家の遠縁のエドワードが60年もの間放置されていた老朽化したホテルを相続する。エドワードは、そこで先祖が書き記した妖術によって、交通事故で失った妻を生き返らせようとする。「冷気」では、人の脊髄液を注射し、冷気によって生命を永らえているマデン博士と下宿に来たエミリーとの悲恋を描く。そして最後「闇に囁くもの」では、パトカーで犯人を追跡していたサラとポールが追跡中に事故を起こしてしまう。相棒のポールが何者かに連れ去られるのを目撃したサラは、その後を追うが。
3話いずれも原作を大きく脚色しているが、「壁の中の鼠」と「冷気」は比較的ラヴクラフトの小説の雰囲気を伝えていると言えるのではないだろうか。しかし、「闇に囁くもの」はブライアン・ユズナが監督しただけあって、怒涛のスプラッター映画と化しており、思わず自分の記憶が誤っていたのかと、原作を読み返したくなるほどのものである。
とは言うものの、ラヴクラフト原作と名乗る映画の大半は殆ど原形を留めておらず、しかも原作の持つ恐怖感を失ってしまっているものが多いのが実態である中、『ネクロノミカン』は比較的健闘している部類の作品である。特に、後に『ガメラ』シリーズで名をあげる我が国の金子修介が監督をした「冷気」が傑出しており、このためだけでも本作を観る価値は充分にあると言えるだろう。
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