The Lord of the Rings: The Two Towers (2002)
Director:ピーター・ジャクソン
Cast:イライジャ・ウッド / イアン・マッケラン / ヴィゴ・モーテンセン / クリストファー・リー
Production Company:ニューライン
1年という拷問のような期間を待ち、漸く幕を開けたJ・R・R・トールキン原作『指輪物語』の第二部『二つの塔』!原作未読者にとっては『旅の仲間』で離散した一行の行方は?そしてまた原作既読者にとっては第二部より登場する重要キャラクター達の描かれ方は?といった大きな期待と不安を募らせ超大作の幕は遂に上がる!
さて、原作既読者である私にとって本作の最も気がかりな点は、既にフルCGで描かれることが公表されていた「ゴクリ」の存在であった。近年のCG技術の目覚しい発展を知ってはいても、物語の鍵を握る重要なキャラクターがフルCGで描かれることに対する不安感、不信感はやはり大きい。しかし、前作同様その不安は無事杞憂に終わった。木の髭、蛇の舌、セオデン、エオウィン、ファラミアといった第二部より登場するキャラクター達の原作のイメージを損なわぬ絶妙なキャスティングに加え、フルCGで描かれたゴクリは、まさにCGであることを忘れさせる程に生き生きと動き、豊かな表情を見せ、違和感なく実写の映像に溶け込んでいた!ゴクリが描かれるにあたって、当初声のみのキャスティングであったアンディー・サーキスが、モーション・キャプチャーを含め全ての演技をこなしたことによる、本作品への彼の貢献は本当に計り知れないものがある。
しかし、前作以上に原作既読者故の不満が残る点が多かったことも事実である。相変わらず勘違いなヒロインとして登場し続ける馬面姫リヴ・タイラーの存在に閉口させられるのはまだ我慢するとしても、何と言ってもファラミアの扱いが原作とは正反対であることに対する不満が大きい。劇場公開時にはカットされたシーンを含むスペシャル・エクステンデッド・エディションではファラミアの人格を窺わせるエピソードが多数挿入されてはいたものの、ボロミアの悪夢再びと言わんばかりの脚本には納得がいかないのである。また、原作に比べ指輪に侵食されるのが余りに早いフロドの演出、そしてそれに呼応して前面にしゃしゃり出てくるサムの存在も不満要素の一つである。確かにサムは『指輪物語』における真の主人公である。しかしそれは純朴なサムが「フロドの旦那」を一心に思い無我夢中で助けんとするからこそなのであり、主人に対してレンバスを投げ与えたり、勇者面をして雄弁に語り出すサムは、サムではない。
と不満を並べててはいるものの、あくまでそれは原作ファンとしての愛と思い入れゆえであり、娯楽超大作としての本作の出来は素晴らしいの一言である。特にヘルム峡谷を埋め尽くすウルク・ハイの大軍団という、空前の規模で描かれた合戦シーンの凄まじさは筆舌に尽くしがたい。槍を地に打ちつけ威嚇する彼らが放つ圧倒的な恐怖感、波のように次から次へと梯子を伝い押し寄せてくるウルク・ハイを目の当たりにする絶望感、本作の戦闘スケールの大きさは間違いなく映画史上最大規模と言える。
牧歌的なホビット庄の風景に代表された前作の雰囲気から打って変わり、強烈な印象を与える作品として仕上がってはいるものの、『二つの塔』はさらに続く第三部『王の帰還』への期待と興奮を嫌が上にも高まらせるに十分な作品である。原作では第二部に登場したあの「彼女」が第三部へとその出番が変更されていることも含め、『王の帰還』への期待は日増しに高まっていくのであった。
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