Von Morgens bis Mitternachts (1920)
Director:カール・ハインツ・マルティン
Cast:エルンスト・ドイチュ / エルナ・モレナ / ローマ・バーン / ロッテ・シュタイン
Production Company:イーラグ
本作『朝から夜中まで』(1920)は、『カリガリ博士』(1920)にはじまったドイツ表現主義をより一層強く押し進めた怪作である。表現主義の劇作家ゲオルク・カイザーの同名戯曲を映画化した意欲作ではあったが、試写会での評は芳しくなく本国ドイツはおろか世界でも公開されず、我が日本での上映のみで幻の作品となってしまう。ドイツで公開されたのは、何と製作から40年以上が経過した1963年のことであった。
ある銀行に異国の貴婦人が10万マルクを引き出しにやってくるが、手続きの関係で引き出しを断られてしまう。彼女の美しさに心を奪われた窓口の出納係である男は、10万マルクを横領し一緒に暮らそうと彼女に迫るが一笑に付され相手にもされない。一方、出納係の横領が発覚した銀行では警察と共に出納係の男の行方を探しはじめる。多額の現金と共に、男のあてのない逃避行がはじまった。
極端にデフォルメされ歪んだ書き割り、太く縁どられ平面的となった立体物、画面全体にセットを配置せず照明を周囲まで行き渡らせない舞台。その極めて平面的で舞台演劇的な中、目の周りを黒く左右非対称に縁どり、奇妙な線が描かれた衣装を着た出納係が目を大きく見開いて演技する。本作は『カリガリ博士』以上に前衛的で表現主義的である。
にもかかわらずドイツ本国での公開が見送られたのは、撮影技法が極端に非現実的である一方で物語はあまりに世俗的で単純に過ぎ、『カリガリ博士』ほどの隠喩と風刺性を持ち合わせていなかったからかもしれない。5幕に渡って顔面が髑髏に変わる異なる女性をローマ・バーンが演じていたり、タイトル通り朝から夜中までを時計を映しつつ時系列的に進める等、面白い試みも見られはするものの、残念ながら全体としてはやや低調な怪作に留まってしまっている。
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