London after Midnight (1927)
Director:トッド・ブラウニング
Cast:ロン・チャニー / マーセリン・デイ / ヘンリー・B・ウォルソール / パーシー・ウィリアムス
Production Company:MGM
本作『真夜中過ぎのロンドン』(1927)を紹介するのは、ある種反則であるかもしれない。と言うのも、本作のフィルムは残念ながら現存しておらず、限られたスチール写真からその映画の雰囲気を察するしか、我々には術がないからである。勿論、私自身も未見の映画である。
現在本作を最もオリジナルに近い形で観る唯一の手段は、TCMがスチール写真と字幕によって紙芝居的にフィルムを再現した映像か、フォレスト・J・アッカーマンが編纂したフォト・ノベルに頼るしかない。それらの断片的な情報だけでも、本作には『魔人ドラキュラ』(1931)や『古城の妖鬼』(1935)に匹敵するだけの濃厚な怪奇的要素が含まれていることが分かる。
後に、トッド・ブラウニングは本作を『古城の妖鬼』としてベラ・ルゴシを主演にリメイクもしている。ルゴシの吸血鬼像が『魔人ドラキュラ』を彷彿とさせるものであったのに対し、チャニーが演じた吸血鬼は、細い針金で眼球を囲み眼を膨れさせた上に全ての歯を尖らせ、山高帽に蝙蝠の羽が付いたマントというもの。これは現在我々が吸血鬼として想像する姿形とは大きくイメージが異なるものであるだけに、チャニーがその姿でどのような立ち振る舞いを見せたのかが分からない事は残念でならない。
何時の日か、本作の完全なフィルムが発見されることを世界中の怪奇映画ファンが望んでやまない、正に「幻の名作」の一つである。
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