House of Frankenstein (1944)
Director:アール・C・ケントン
Cast:ボリス・カーロフ / ロン・チャニー・Jr. / グレン・ストレンジ / ジョン・キャラダイン
Production Company:ユニヴァーサル
ユニヴァーサル・フランケンシュタイン・シリーズ第6作目。前作『フランケンシュタインと狼男』(1943)の怪物の共演が好評だったため、ユニヴァーサルは遂にドラキュラ、フランケンシュタインの怪物、狼男を共演させるという暴挙とも言える「怪物くん」映画を制作する。もはやかつてのユニヴァーサル・ホラーの格調高さは失われ、ただの娯楽映画と成り果てた作品と位置付けることができよう。
牢獄に捕われていたニーマン博士は、ある夜雷によって牢が崩れた機に乗じて脱獄し、傴僂男のダニエルと共に地方巡業の見世物小屋の馬車を奪い去る。見世物小屋の目玉はドラキュラの遺骨であり、棺に納められたその心臓には杭が打ち込まれているという趣向だった。ところが、偶然にニーマン博士がその杭を引き抜くと、なんと遺骨はドラキュラとなってこの世に甦る。そう、地方巡業の目玉、ドラキュラの遺骨は本物であったのである。ニーマン博士はドラキュラを利用して彼の素性に気付いた警察官を殺害させるが、追っ手がかかったドラキュラを陽光の下に置き去りにし、再び逃走を続ける。やがてフランケンシュタインの城跡へと辿り着いたニーマン博士は、そこに氷漬けとなった狼男とフランケンシュタインの怪物を発見し、弱りきった怪物を回復させるべく、邪悪な研究を再開するのであった。
物語の要約を読んで頂ければ分かる通り、もはや筋らしい筋はない。前作『フランケンシュタインと狼男』もモンスター共演のためにかなりの原作無視を敢行していたが、本作は破綻しているとすら言える強引な展開である。しかも、本作の目玉であるはずのドラキュラは物語前半であまりにもあっけなく滅び、フランケンシュタインの怪物は度重なる復活・手術・氷結のせいか弱りきっており手術台から起き上がることも覚束ない。やっとのことで起き上がったと思えば既に狼男は死んでおり、単独で暴れるという木偶の棒ぶり。これでは何のために設定を無視してまで三者を共演させたのだか、と首を捻りたくなってしまう情けなさである。それぞれの見せ場も非常に中途半端であり、不満が残る。本作に臨むにあたっては思い入れを捨て去り、パラレルワールド的なものであると割り切る方が賢明であろう。
本作ではドラキュラ伯爵に最も原作のイメージに近いと評されたジョン・キャラダイン、狼男ローレンス・タルボットは前作同様ロン・チャニー・Jr.が扮し、4代目となるフランケンシュタインの怪物を活劇出身で体格のよいグレン・ストレンジが演じている。このジョン・キャラダインの演じた3代目ドラキュラは、奇怪な雰囲気を濃厚に漂わせた初代ドラキュラのベラ・ルゴシ、田舎の金持ちといった冴えない風貌の2代目ロン・チャニー・Jr.とは異なり、最も貴族的で物腰も優雅である。怪奇幻想映画の愛好家ならば、このキャラダインのドラキュラを目当てに本作を観るのも悪くはなかろう。ちなみにこの洒落たドラキュラは間違いなく「怪物くん」のざーますドラキュラのモデルとなっていると思われる。
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