White Zombie (1932)
Director:ヴィクター・ハルペリン
Cast:ベラ・ルゴシ / マッジ・ベラミー / ジョン・ハロン / ロバート・フレイザー
Production Company:ハルペリン・プロダクション
世界で最初に作られた記念すべきゾンビ映画の古典にして、『魔人ドラキュラ』(1931)で一躍怪奇俳優としての地位を確立したベラ・ルゴシの代表的主演作の一つ。本作でのゾンビは、後にジョージ・A・ロメロによって確立されるカニバリズム的色彩を持たず、ハイチの民間伝承により忠実な「労働に従事させられる死体」として描かれている。
カリブ海に浮かぶ楽園ハイチ。旅先で出会った親切な男、ボーモンに誘われるままハイチで挙式を挙げようと、若いカップルのニールとマデリンが彼の館を訪れる。幸せな二人を祝福するかに見えたボーモンであったが、彼は密かにマデリンを我が物にせんと画策していた。やがて挙式の後、魔術師の策によってマデリンは意識を失いゾンビと化してしまうが、彼女の美しさに惹かれた魔術師は、ボーモンをもゾンビへと変え彼女を奪おうとするのであった。
本作『ホワイト・ゾンビ』(1932)は世界で最初に作られたゾンビ映画とは言うものの、恐怖の主体はゾンビではなく、それを操る魔人ルゴシその人にある。横恋慕のさらに横恋慕という物語は情けないが、土俗的でおどろおどろしい太鼓のリズムに乗ってはじまる冒頭から、一気に異世界へと引きずり込まれるような展開は何度見てもゾクゾクさせられる。ゾンビを操る際に見せるルゴシお得意の眼光鋭い演技は文句なく素晴らしく、派手なメイクをするわけでもなくただ宙をみつめふらふらと彷徨うゾンビ達も逆に不気味な効果を生み出しており、まさに古典的怪奇映画の良き香りに満ち満ちた作品である。
また、本作は『魔人ドラキュラ』で使われたドラキュラ城を借り受け撮影されたため、低予算映画であることを微塵も感じさせず、怪奇映画マニアならば「あのセットがこんなところで!」とニヤリとすること請け合いである。大時代的な演技を得意としたルゴシの持ち味を濃厚に楽しめる、数少ない傑作。是非とも、御一見を。
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