Vampyr (1932)
Director:カール・テオドール・ドライヤー
Cast:ジュリアン・ウェスト / アンリエット・ジェラード / レナ・マンデル / シビル・シュミッツ
Production Company:カール・テオドール・ドライヤー・プロダクション
幻想的な映像の積み重ねで綴られた吸血鬼映画の古典であり、怪奇幻想映画を紹介する書籍等では必ずと言ってもよいほどその名が挙げられ高い評価を得ていることで知られる作品。
が、勇気を持って言ってしまおう。この映画は退屈極まりない。評論家の高い評価を得ていることから、この作品を解せぬ者は芸術をも解せぬ人間である、という妙に重苦しい雰囲気があるものの、やはり「つまらない」ものはつまらない。有名な死神を連想させる鎌を持った農夫のシーンや、自らの肉体が棺に納められる光景を上から眺めるシーン等は確かに幻想的でイマジネーションを強く刺激する。しかし、断片的で抽象的に過ぎるその脚本や映像は、映画としての娯楽性を欠き極めて退屈であることは否めない。
『ヴァンパイア』(1932)は濃密に漂う奇怪な雰囲気を肌で感じ取る作品であり、娯楽性を求めるべき作品ではない、と言えばそれまでではあるが、私としては雰囲気に加えて娯楽性がなくては映画というメディアとしてはやはり片手落ちであるようにも思う。確かに一見する価値はある幻想的な作品ではあるが、私にとっては何回も見返したくなるものではないというのが正直なところである。
なお、主演のジュリアン・ウェストはラヴクラフトに驚くほど似ており、『ネクロノミカン』(1993)でメイクを施しラヴクラフト本人を演じたジェフリー・コムズと違い、彼ならば素顔のままでラヴクラフトを演ずることができたであろうと思わせる顔立ちをしている。
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