Voodoo Man (1944)
Director:ウィリアム・ボーダイン
Cast:ベラ・ルゴシ / ジョン・キャラダイン / ジョージ・ズッコ / ルイーズ・カリー
Production Company:バナー
ベラ・ルゴシが最も好きな怪奇俳優である私にとっては何とも悲しいことであるが、『魔人ドラキュラ』(1931)以降のルゴシの出演作品は低調な物が多い。特にその傾向は40年代に入ると顕著となる。本作もキャスティングを見ただけでおおよそそのレベルは分かろうと言うもの。ルゴシ、キャラダイン、ズッコ。そして監督は『猿の怪人』(1943)のウィリアム・ボーダイン。もう、観る前から悪い予感しかしない顔ぶれである。
結婚を目前に控えていたラルフは、妻となるベティの家へと向かう途中でガス欠となり、偶然にもベティの従兄弟のサリーの車に同乗する。しかし、道中車が突如故障し、ラルフが近くの家へと助けを求めに行った間にサリーは忽然と姿を消してしまう。実はその一帯では、女性が立て続けに失踪する事件が起こっていたのであった。
本作『ブードゥーマン』(1944)は、ブードゥー教らしき儀式のシーンもあり、誘拐した女性達をゾンビと呼称してはいるものの、実際には彼女達はゾンビではない。誘拐された女性達はある種の催眠術にかかっている状態でしかなく、ルゴシ演ずるマーロウ博士は22年前に亡くなった美しい妻の亡骸にその女性達の魂を移すことで、妻を甦らせようとしているのである。
どうして亡くなった妻に魂を転移させることができ、わずかな間だけでも甦った妻はどうしていきなり自己の人格で甦るのか、等と野暮なことを言ってはいけない。ぽこぽこと太鼓を叩くキャラダインが妙に可愛いとか、ラストのオチがクスリとも笑えないとかも言ってはならない。本作はルゴシの大時代的な演技が観られればそれで良しとするような、私のようなマニア向けの作品なのである。
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