She Wolf of London (1946)
Director:ジーン・ヤーブロー
Cast:ドン・ポーター / ジューン・ロックハート / サラ・ヘイドン / ジャン・ワイリー
Production Company:ユニヴァーサル
『倫敦の人狼』(1935)を連想させる原題であるが、本作はユニヴァーサルの狼男シリーズに連なるものではなく、狼女が出てくるわけではない。むしろ、RKOの『キャット・ピープル』(1942)のような、強迫観念をテーマとした心理サスペンス映画である。
広大な屋敷を持つアレンビー家の娘、フィリスは叔母のマーサとその娘キャロルと3人で暮らしていた。フィリスは近々バリーとの結婚を控えていたが、彼女はアレンビー家に伝わる呪いを気にしていた。アレンビー家は、狼に呪われているという言い伝えがあったのである。そんな中、近くの公園で狼女の仕業と噂されるような殺人事件が発生する。しかも、目覚めたフィリスの手には血が付いており、靴は泥まみれ。自らが狼女なのではないかと怯えるフィリスであったが・・・。
狼に呪われた家系に怯える美しき女性という設定自体は怪奇映画的で非常に良いのであるが、物語前半に犯人の目星がついてしまう会話が存在しており、この構成がどうにもいただけない。ラストの犯人による独白部分にその部分を纏めた方が、作品全体を通じての緊張感がもっと持続したのではないだろうかと惜しまれる。
家系の血に怯えるという意味では『キャット・ピープル』に相通ずるものがあるが、『キャット・ピープル』があくまで怪奇幻想の世界に留まっているのに対して、本作『謎の狼女』(1946)は完全なサスペンス映画として制作されている。よって、最終的には犯人が明らかとなり、合理的な解決を迎えることになる。この部分は好みが分かれるところであろうが、私としては怪奇幻想の世界で勝負した『キャット・ピープル』の方に軍配を上げたいと思う。
最後に蛇足ではあるがヒロインのフィリスを演ずるジューン・ロックハートは、土屋アンナに似ている。と思うのは私だけだろうか。
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