House of Wax (1953)
Director:アンドレ・ド・トス
Cast:ヴィンセント・プライス / フィリス・カーク / キャロリン・ジョーンズ / チャールズ・ブチンスキー
Production Company:ワーナー
ヴィンセント・プライスがそれまでの性格俳優から怪奇俳優へと本格的に転向するきっかけとなった記念すべき作品。この後にヴィンセント・プライスは『蝿男の恐怖』(1958)を経てロジャー・コーマン監督の一連のポオ作品に主演したことで、ピーター・カッシングやクリストファー・リーらと並び怪奇俳優の地位を不動のものとする。
芸術的な蝋人形を作り上げる天才ジャロッドは、経営難のため保険金目当てで蝋人形館に火を放った出資者によってその作品を失い、行方が分からなくなる。やがて、保険金を受け取った出資者の謎の自殺の後、ジャロッドは真に迫った人形と共に恐怖の館の主人として再び姿を現した。しかし、その人形達は奇怪にも相次いで盗まれた遺体の顔と非常に酷似していた・・・。
本作は『大アマゾンの半魚人』(1954)同様に3D効果を売りにした作品であり、世界初の総天然色立体映画である。そのためか、『大アマゾンの半魚人』以上に立体映画であることを強く意識しており、蝋人形館の奥行きを意識的に見せるテクニック的なものから、単純な立体効果を狙った無意味なシーンまで、様々な工夫が凝らされているのが微笑ましい。ただ惜しむらくは、立体効果に気を取られ過ぎたのか、『オペラ座の怪人』に匹敵するだけのショッキングなシーンがあるにも関わらず、その演出がさらっとしているように思われることである。折角の怪奇映画的な見せ場が勿体無い・・・と感じてしまうのは私の怪奇の血が濃すぎるせいかもしれないが。
しかし、『肉の蝋人形』(1953)は充分に優れた怪奇映画であり、特にヴィンセント・プライスの演技は素晴らしいの一言である。元々アクの強い演技を得意としある種の「いかがわしさ」を濃厚に発する彼の本領は、蝋人形館の主人という役柄を得て如何なく発揮されている。一見繊細で温厚でありながらも、その下に狂気が秘められていることを観る者に肌で感じさせるその演技は、間違いなく彼のベストアクトの一つと言えるだろう。
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