Dracula has risen from the Grave (1968)
Director:フレディ・フランシス
Cast:クリストファー・リー / ルパート・デイビス / ヴェロニカ・カールソン / バーバラ・ユーイング
Production Company:ハマー
ハマー・フィルムのクリストファー・リー主演ドラキュラ・シリーズ第3作目。前作『凶人ドラキュラ』(1966)であえなく氷の下へと消え去ったドラキュラは、崖から転落した牧師が流した血がその口まで流れ込んだことによって復活する。この余りに御粗末な復活に先行き不安を感じた方、その予感は正しい。本作はシリーズ3作目にして早くもマンネリ化の予兆を感じさせる作品なのである。
『帰ってきたドラキュラ』(1968)の特徴は何と言っても杭を打ち込まれたドラキュラが、自らその杭を引き抜くところにある。本作ではドラキュラを退治するには、杭を打ち込んだ後に祈りを唱えなくてはならないという設定のため、自称無神論者のポールはドラキュラに杭を打ち込むものの祈りを唱えることをせず、ドラキュラは杭を引き抜き甦るのである。このシーンは特筆すべきインパクトを持った映像ではあるが、裏返せばこのような捻った設定にしなくてはドラキュラの魅力を引き出せなかったということでもあり、ハマー首脳陣のマンネリに対する重圧が強く感じられる。
また、これは本作に限ったことではないが、ハマーのドラキュラ・シリーズが傑作『吸血鬼ドラキュラ』(1958)を超えることが出来なかったのは、ドラキュラに対峙するヒーローの不在という問題が大きい。ピーター・カッシング演じたヴァン・ヘルシングに匹敵するだけの魅力を持ってドラキュラに立ち向かう存在がいないことで、ドラキュラ自身も魅力が半減してしまっているのである。
とは言え、『凶人ドラキュラ』で台詞を一言も発さなかったリーは幾許かの台詞を喋り、その犠牲となるヒロインを演ずるヴェロニカ・カールソンはドラキュラ・シリーズきっての正統派美人であるため、本作品はシリーズ中ではそこそこの魅力ある作品である。ドラキュラが自ら打ち込まれた杭を引き抜くという珍しいシーンもあるため、一見する価値はあると言えよう。
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