Twins of Evil (1971)
Director:ジョン・ハフ
Cast:マデリーン・コリンソン / メアリー・コリンソン / ピーター・カッシング / デニス・プライス
Production Company:ハマー
ハマー・フィルムのカルンシュタイン三部作の最後を飾る作品。本作もやはりシェリダン・レ・ファニュの『吸血鬼カーミラ』を原作とする、となってはいるが、カーミラはカルンシュタイン伯爵を誘惑する際にのみ登場するだけであり、事実上オリジナルの吸血鬼映画である。
魔女狩りの嵐が吹き荒れる村。冷酷なまでに厳格に魔女狩りを推し進めるグスタフの下に、両親を失ったフリーダとマリアの美しい双子が引き取られてくる。グスタフの厳格さに反発するフリーダはやがて悪魔を崇拝するカルンシュタイン伯爵の城へ夜遊びに向かい、そこで吸血鬼と化してしまう・・・。
本作でヒロインを演じるコリンソン姉妹はプレイメイト出身の双子であり、エロティック度を高めたカルンシュタイン三部作の「お約束」通り、胸元が大きく開いた洋服や薄く透けた寝間着等でその豊かな姿態を晒している。しかし、前作『恐怖の吸血美女』(1971)が低俗極まりない作品であったのに対して本作『ドラキュラ血のしたたり』(1971)は、まだ鑑賞に堪えうる品格を保っていると言えよう。それは、無意味な裸体描写が比較的抑えられたことと、悪役であるカルンシュタイン伯爵をも圧倒する存在感を放つ、グスタフを演じるピーター・カッシングの素晴らしい演技に起因する。
魔女であることの証をさして確かめるでもなく次々と若い女性達をテンポ良く火刑に処す様はハマーらしい演出とも言えるが、「悪魔を信じぬ者は神をも信じぬ者である」という教義の逆転を見せた、歴史上の魔女狩り同様に非情なまでに魔女狩りを推進するグスタフの存在は、カルンシュタイン伯爵同等、いやそれ以上に悪を感じさせるものである。しかし、その「悪」の存在感は決して「邪悪」なものではなく、「善」なる信念に根ざした上での結果的な「悪」という、何とも複雑なものである。その複雑な悪の存在感を表情や素振りから伝えるカッシングの演技はまさに絶妙の一言に尽きる。
本作は無意味な裸体のシーンの多いカルンシュタイン三部作の中にあって、比較的裸体描写が少ない上にコリンソン姉妹も美しく、また『ヘルハウス』(1973)で知られるジョン・ハフ監督の演出も手堅く、ハマー末期の吸血鬼映画としては充分に楽しめる作品であると言えよう。
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