The Wicker Man (1973)
Director:ロビン・ハーディ
Cast:エドワード・ウッドワード / クリストファー・リー / ダイアン・シレント / イングリッド・ピット
Production Company:ブリティッシュ・ライオン
ハマーでのドラキュラ俳優としてのイメージが固定化されることを嫌ったクリストファー・リーが、ブリティッシュ・ライオンの社長ピーター・スネルと共同で制作したペイガニズムを主題としたカルト映画。当初撮影されたのは120分に渡る尺であったと言うが、現存しているのは88分の劇場公開版と、オリジナル版に近い形で再編集された99分版である。
スコットランドの巡査部長ハウイは、サマーアイル島で行方不明になった少女の捜索を依頼される。調査のため島へ向かったハウイは、島ではケルト的な異教信仰に基づいた生活が送られていることを知る。性に対して開放的な異教信仰に嫌悪感を隠せない彼は、領主サマーアイル卿のもとを訪れるが、島ではキリスト教を捨てて古い宗教儀式に戻ったところ、凶作がなくなったのだと聞かされる。やがて、調査を進めるハウイは、失踪した少女が人身御供として殺されたのではないかという疑念を抱き始める。
本作のタイトルでもある「ウィッカーマン」とは、ドルイド教徒が柳の枝で編んだ巨大な人型の檻に、生贄を入れて燃やしたものである。そこからも分かる通り、本作は全編に渡ってケルト的な民俗風習が描かれており、のどかで奇妙に原始的である一方で開放的な性風習のエロティックさが、かえって不気味な雰囲気を作り上げている。また、随所に挟まれるフォークソング的な歌の数々も、どこかしら奇怪で謎めいており、サントラとしても高い評価を得ている。
厳格なキリスト教徒であるハウイが、異教信仰の行き渡った閉鎖された孤島では逆説的に異教徒となる、というアイロニカルに満ちた脚本の観点も素晴らしく、ハマーのイメージを嫌っただけあって、普段とは異なった怪演を見せるリーも非常に新鮮。正に、カルト映画の名に恥じぬ怪作である。
amazonでこの映画を検索