Gods and Monsters (1998)
Director:ビル・コンドン
Cast:イアン・マッケラン / ブレンダン・フレイザー / リン・レッドグレーヴ / ロリータ・ダヴィドヴィッチ
Production Company:ライオンズ・ゲイト
『フランケンシュタイン』(1931)、『魔の家』(1932)、『透明人間』(1933)、『フランケンシュタインの花嫁』(1935)といった、ユニヴァーサルの黄金時代を支えながらも同性愛者であったと噂されハリウッドを遠ざかったジェームズ・ホエール監督の晩年を描いた問題作。怪奇映画の同好の士であるならば、必ずや食指が動くこのテーマではあるが、怪奇幻想を愛する者であればある程この映画は観てはいけない。
というのもこの映画、映像は確かに美しく、忘れ去られた過去の偉業にすがる老人の悲しき晩年というテーマもうまく描けてはいる。しかしとにかく露悪的なのである。庭師のクレイトンの肉体に欲情し襲いかかるホエールの姿は、只でさえ同性からは反発を受けやすい繊細なセクシャリティの問題を不必要に悪趣味に描いているように思われてならないのである。
ホエールの作品には戦争の影がある。非情なまでにあっさりと行われる殺人や、奇妙なブラックジョークにその影響は濃厚に感じ取られる。しかし、そういった彼の側面がこの『ゴッド・アンド・モンスター』(1998)ではうまく描ききれたとは思えない。戦争の影を負った映画監督としての側面と年老いたゲイといった双方の要素が混在し、よりインパクトのあるゲイという側面に戦争の影は薄れ行く。まるでホエールが戦争で覇気を抜かれ、抜け殻となった年老いたゲイであるかのような印象が強すぎる。第一次世界大戦中に囚人達と共に演劇活動を行い、戦争後に舞台監督として名を挙げ、ユニヴァーサルの切り札として活躍した彼の経歴を知っている人間ならばいざ知らず、そういった情報をもち得ぬ一般客層にはホエールは一体どのように映るであろうか?
怪奇幻想映画を愛する人間だからこそ、私はこの映画を許すことができない。ホエールに対する不当な再評価が下されかねないこの映画はあまりに危険である。
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