The Call of Cthulhu (2005)
Director:アンドリュー・レマン
Cast:マット・フォイヤー / ジョン・ボーレン / ラルフ・ルーカス / チャド・ファイファー
Production Company:HPLHS
映画化は不可能と思われていたラヴクラフトの代表作にしてクトゥルフ神話の聖典「クトゥルフの呼び声」の完全映画化作品。映画化を行ったのはThe H.P. Lovecraft Historical Society(HPLHS)、ラヴクラフトの愛好家達で組織された好事家集団である。
本作は2005年に制作されたにも関わらず、ラヴクラフトが生きた時代の空気を再現することをコンセプトとしており、何とドイツ表現主義を思わせる陰影の強いモノクロ、サイレント映画として作られている。しかし、その狙いがこの上なく原作の持つ異様な世界観を演出することに貢献しており、ルグラース警部達が沼沢地で目撃する狂信者達の狂乱のさまや、『カリガリ博士』(1920)を思わせる幾何学的に狂ったルルイエの出来栄えは素晴らしく悪夢的である。
そして、CGを使うことなくコマ撮りで現れるクトゥルフの禍々しきその姿。流石にオブライエンやハリーハウゼンと比べると、何とも稚拙で微笑ましい出来栄えではあるものの、私のように思春期にラヴクラフトに心酔した者ならば感動に打ち震えること間違いなしである。
本作はラヴクラフトを敬愛するHPLHSが制作しただけあって非常に原作に忠実に作られており、明らかな低予算作品ながらも数あるラヴクラフト原作と称する映画の中では屈指の完成度と満足感を得られる映画である。随所に感じられる手作り感すらもラヴクラフトへの愛情に満ち溢れており、メジャー作品と肩を並べる完成度とは決して言えないが、予算と技術を情熱でカバーしようとする制作者達の真摯な姿勢が感じられる。ラヴクラフティアンを自称する者ならば必見の作品。
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