The Whisperer in Darkness (2011)
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Director:ショーン・ブラニー
Cast:スティーブン・ブラックハート / アニー・エイブラムス / オータム・ウェンデル / ザック・ゴールド
Production Company:HPLHS
『クトゥルフの呼び声』(2005)に続いてHPLHSが制作したラヴクラフトの「闇に囁くもの」の映画化作品。「闇に囁くもの」としては、『ネクロノミカン』(1993)でブライアン・ユズナが監督した3話目に続く2度目の映画化となる。日本では2017年のカナザワ映画祭で『クトゥルフの呼び声』と共に上映された。
ミスカトニック大学で民俗学を教えるウィルマース教授は、バーモント州の奥地で信じられている怪物の伝承を研究していた。そんな彼の元に、実際にその怪物が自身の農場に現れているというエイクリー老人から物的証拠が送られてくる。怪物の存在に否定的であったウィルマースであったが、エイクリーと手紙をやり取りするうちに怪物の存在を信じるようになり、遂にエイクリーの農場へと足を運ぶことにするのであったが。
ブライアン・ユズナが映画化したトンデモ版と比べれば、本作はHPLHSが制作しただけあって原作にかなり忠実に作られており、安心して観ることができる。しかしそれでも長尺の作品とするためか、後半は大幅に脚色されてしまっており、クトゥルフ神話TRPGであるかのような起承転結を強く意識した冒険活劇要素が付け加えられてしまっている。これは賛否の分かれるところではあろうが、私としては短編にしてでも『クトゥルフの呼び声』同様に原作に忠実な完全映画化を行ってほしかったところである。
とは言え、薄暗い部屋の片隅で耳障りな囁き声を発するエイクリーの演出は原作既読者ならば思わず「そうそう!」と膝を打ちたくなるほど雰囲気十分。『クトゥルフの呼び声』と合わせて押さえておきたい作品である。
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