Annabelle Comes Home (2019)
Director:ゲイリー・ドーベルマン
Cast:マッケナ・グレイス / マディソン・アイズマン / ヴェラ・ファーミガ / パトリック・ウィルソン
Production Company:ニュー・ライン・シネマ
『死霊館』(2013)の冒頭でウォーレン夫妻が預かったアナベル人形を自宅に持ち帰った後の顛末を描いた、死霊館シリーズ第7作目。本作で監督を務めるのは、『アナベル 死霊館の人形』(2014)、『アナベル 死霊人形の誕生』(2017)、『死霊館のシスター』(2018)で脚本を担当していたゲイリー・ドーベルマンであり、本作が初監督作品となる。
しかし困ったことに本作は全く怖くない。アナベル人形や血染めの花嫁、三途の川の渡守フェリーマン、狼男や日本の甲冑等、博物館にある呪いの品々のそれぞれのいわくに沿った見せ場が描かれるのはワクワクするが、それが逆にホラー版『ナイトミュージアム』(2006)であるかのようになってしまっている。呪いの品々の背景やストーリーに想像を巡らすのは作り手として楽しい作業であることは分からなくもないが、それが空回りした印象を受ける。
また、本作のテーマがキリスト教の「赦し」であるのは明白であり、ジャネットが悪霊達に立ち向かう際に暗唱する一節がまさにそれそのものである。このテーマが恐怖を盛り下げる一因であるように思う。事件の発端となるダニエラに対するウォーレン夫妻の赦し、交通事故で父親を殺してしまったダニエラに対する父親の赦し、いじめていた男の子に対するジャネットの赦しと、テーマが繰り返されるのも鼻につく。そもそも、ホラー映画に人に対する「赦し」など不要である。赦しを必要とし求めているのは、排除される側の怪物や悪霊なのであって、排除する側の人間ではない。
本作は良くも悪くもまさに「ユニバースもの」でありファンサービス的な作品なのだが、死霊館ユニバースならば怖くないのは致命的である。私が唯一喜んだのは『アナベル 死霊人形の誕生』でビーを演じていたサマラ・リーがちらりと映ったシーンだけであった。死霊館シリーズを全て観ないと気が済まない、という私のような方向けの駄作。
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