Kiss of the Vampire (1963)
Director:ドン・シャープ
Cast:クリフォード・エバンス / ノエル・ウィルマン / ジェニファー・ダニエル / イソベル・ブラック
Production Company:ハマー
『吸血鬼ドラキュラ』(1958)の成功を受け、ハマーはクリストファー・リー主演のドラキュラ映画の続編『Return of Dracula』を計画する。しかし、リーがドラキュラ役に縛られることを嫌ったため、『Return of Dracula』は頓挫。その脚本は手直しされ、本作『吸血鬼の接吻』(1963)として製作されることとなった。
新婚旅行でドイツの片田舎を旅していたジェラルドとマリアンヌは、ガス欠のため寂れた宿屋に暫くの間滞在することとなる。二人はそこで地元の名士ラブナ博士と知り合い、城で開かれる仮面舞踏会に招待されるのであったが、ジェラルドは酒を飲みすぎ酔いつぶれてしまう。そして翌朝目覚めた彼は、妻マリアンヌが姿を消していることを知る。ラブナ博士こそは吸血鬼の一族であり、マリアンヌは吸血鬼として迎え入れられようとしていたのであった。
ドラキュラとヘルシングの不在というハンデを補うためか、本作は随分と変わった吸血鬼映画となっている。ドラキュラ伯爵に相当するラブナ博士は白装束の吸血鬼の一派を束ねており、あたかもカルト教団であるかのよう。一方のヘルシング教授に相当するツィンマー教授も魔術を用いて吸血鬼達を退治しようとするなど、『吸血鬼ドラキュラ』とは異なる趣向を凝らそうとする製作陣の苦労が随所に感じられる。しかし、ならばこれは吸血鬼映画とする必要性があったのだろうか、と首を捻りたくもある。
本作は『凶人ドラキュラ』(1966)との類似点が多く、ラブナ博士の城のミニチュアが『凶人ドラキュラ』のドラキュラ城と同じである点や、埋葬シーンから始まりそれを阻害する者が現れる点、新婚の旅の夫婦が城を訪れることで吸血鬼の犠牲となる点など、物語の展開も極めて似ている。そういった意味では本作はマニア的に興味深い作品ではあるものの、ニンニクのエキスを扉に十字に塗ると吸血鬼達が城から出られなくなったり、ラストの衝撃な展開など、アタマに「?」が並ぶことの多い作品でもある。
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