The Woman in Black (2012)
Director:ジェームズ・ワトキンス
Cast:ダニエル・ラドクリフ / キアラン・ハインズ / ジャネット・マクティア / リズ・ホワイト
Production Company:ハマー
新生ハマー・フィルムが『モールス』(2010)に続いて製作した、正統派ゴシック・ホラー。原作は本国イギリスや我が国でも舞台で上演されたスーザン・ヒルのベストセラー『黒衣の女』、主役のアーサーを演ずるはハリー・ポッターを卒業後初の作品となるダニエル・ラドクリフという、何ともわくわくする組み合わせである。
19世紀のロンドン。出産で妻を亡くした若き弁護士アーサーは、他界したドラブロウ夫人の館で彼女の遺言書を見つけ出すよう片田舎の村へと出張を命じられる。村では次々と子供が亡くなる不審な事故が起こっており、村人達は余所者のアーサーに協力しようとはしない。やがて、アーサーは館で過去に子供の溺死事件があり、それをきっかけとした忌まわしい呪いがあることを知るのだった。
本作はとても丁寧で上品に作られた、日本の怪談ものに近い肌触りのじめっとした幽霊譚である。原作自体が極めてオーソドックスな古典的怪奇小説であることに加えて、ジャパニーズ・ホラーを参考にしたと思しき脚色、演出が随所に見受けられるため、日本的な感性が感じられる。特に、馬車を沼地から引き揚げ息子の亡骸を母親と共に埋葬することで呪いを断ち切ろうとする原作にはないくだりは『リング』の強い影響が感じられる。
原作者であるスーザン・ヒルはラストの展開に満足はしていないようであるが、これはこれで優等生的に綺麗にまとまっていると思う。グロテスクな描写もなく、ホラー映画といっても上品に仕上がっているため、ラドクリフがアイドル的人気から脱却するための第一歩として、本作は彼にとっても、彼のファン達にとっても非常に良い作品だったと言えるのではないだろうか。
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