Tower of London (1939)
Director:ローランド・V・リー
Cast:ボリス・カーロフ / バジル・ラズボーン / バーバラ・オニール / ヴィンセント・プライス
Production Company:ユニヴァーサル
『フランケンシュタイン復活』(1939)に続いてバジル・ラズボーン、ボリス・カーロフ主演、ローランド・V・リー監督の組み合わせで製作された、ユニヴァーサルの怪奇映画風シェイクスピア劇。後にロジャー・コーマンがAIPで監督した62年版でグロスター公リチャードを演ずることとなるヴィンセント・プライスが、本39年版ではクラレンス公ジョージを演じている。
15世紀のイングランド。王位継承を目論むグロスター公リチャードは狡猾な策略を張り巡らしては対立する者達を次々と処刑し、宮廷での地位を固めていた。リチャードは残忍な処刑人モードを操り実父ヘンリー6世を暗殺、続いて次兄クラレンス公ジョージをも殺害する。実兄のエドワード4世の死後、摂政として強大な権力を手にしたリチャードはエドワードの跡継ぎである王子をロンドン塔に幽閉し、遂に権力を掌握する。しかし、フランスに身を隠していたヘンリー・テューダーは、その間に着々と戦の準備をしていたのだった。
本作『恐怖のロンドン塔』(1939)は、58万ドルという巨額の予算(『フランケンシュタイン復活』は42万ドル)をかけて製作されただけあって、ロンドン塔の壮大なセットや衣装、300人のエキストラを投入した大規模な戦場シーンなど、真面目に史実映画を製作しようとしていたフシが随所に見てとれる。そのためか、我らがカーロフ演ずる処刑人の存在は中途半端であり、せっかく登場する数々の拷問器具もさほど生かされることなく純然たる怪奇映画を期待すると何ともガッカリさせられる。
一方で本作が映画出演3作目となる若き日のプライスは登場シーンが少ないながらも、生き生きと存在感を発揮している。特にラズボーンとのワインの飲み比べは、後の『黒猫の怨霊』(1962)でピーター・ローレを相手にコミカルに演じたワインのテイスティング合戦を予感させる。全体としては予算の割に平凡ではあるが、AIPのポオ・シリーズで名を連ねることになるカーロフ、ラズボーン、プライスの共演という点に魅力を感ずる方ならば一見の価値はある作品。
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