The Pit and the Pendulum (1961)
Director:ロジャー・コーマン
Cast:ヴィンセント・プライス / バーバラ・スティール / ジョン・カー / ルアナ・アンダース
Production Company:AIP
AIP/ロジャー・コーマンのポオ・シリーズ第2作目。前作『アッシャー家の惨劇』(1960)とほぼ同様のスタッフ、キャストで制作され、スタッフ・ロールには主演ヴィンセント・プライス、監督ロジャー・コーマン、脚本リチャード・マシスン、美術監督ダニエル・ハラーと、お馴染みの顔が並んでいる。そして今回の原作は「陥穽と振子」を主体に「早まった埋葬」の要素を再び加え脚本化されている。
時は16世紀。かつて悪名高き異端審問官であったメディナ家に嫁いだエリザベスの急死を受け、兄のフランシスが英国よりメディナ家にやってくる。陰鬱な城に住むメディナ家の当主ニコラスは、エリザベスの死因をはっきりと言及せず、不審な挙動を繰り返すばかり。フランシスの疑念が募りゆく中、やがて死んだはずのエリザベスのささやき声や、ハープシコードが無人の部屋から響く等の奇怪な現象が起こり始める。そしてエリザベスを生きたまま埋葬してしまったのではないかという恐怖に怯えるニコラスは、徐々に精神的に追い詰められていくのであった・・・。
前作『アッシャー家の惨劇』のセットの大半を使い回し、脚本自体も前作と非常に似通った展開を見せるため、続けて見ると一体どちらの映画を見ているのか混乱する作品でもあるが、本作『恐怖の振子』(1961)の方がより文芸的な趣は高い。特に拷問部屋と振子のセットの出来栄えは傑出しており、本作が低予算映画であることを忘れさせる上下に広がるセットの陰湿な異様さは、ポオの紡ぎ出した悪夢的な世界を見事に具現化していると言える。風を切り音を唸らせ徐々に下がり行く振子の圧倒的な存在なくしては、本作は成り立たないということを正しく理解し、限られた予算の中で実現した美術監督ダニエル・ハラーのまさに面目躍如である。
それでもやはり、前作のセットを使い回さんがために無理矢理物語を脚色したのではないかと勘繰りたくなるような展開は余りよろしくない。この辺を許すことが出来るかどうかでB級映画の帝王ロジャー・コーマンへの評価は大きく分かれることだろう。生真面目に過ぎる私としては実は許すことが出来なかったりするのであるが、ラストのバーバラ・スティールの眼差しに免じ、あえて眼をつぶることにしている・・・。
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