Die, Monster, Die! (1965)
Director:ダニエル・ハラー
Cast:ボリス・カーロフ / ニック・アダムス / スーザン・ファーマー / フリーダ・ジャクソン
Production Company:AIP
ロジャー・コーマンの下で美術監督を担当し、一連のAIPポオ・シリーズのセットで評価を得ていたダニエル・ハラーの初監督作品。原作はラヴクラフトの「宇宙からの色」で、ラヴクラフト原作と謳う映画化作品の多くが「どこがラヴクラフトじゃー!」という怒りを伴う内容であるのに対して、本作は原作に大幅な脚色を加えつつも、比較的原作の雰囲気をうまく伝えている佳作と言える。
アーカムの郊外に住むウィットリー家に、娘のスーザンと結婚を約束した青年スティーヴンがやってくる。しかし、屋敷周辺の木々は枯れ果て、土壌は黒く荒廃し異様な光景がそこには広がっていた。スーザンの父親であるナウムは、理由をつけては彼を追い返そうとするばかり。メイドや執事が次々と原因不明の病に侵され、スーザンの母親さえも病に臥せっている不審な状況の中、スティーヴンはその原因がナウム老人が温室に隠している何かにあることを突き止めるのであったが。
流石は低予算早撮りで知られるコーマンの下でも素晴らしい美術効果をあげていたダニエル・ハラーなだけあって、アーカムの焼け野の雰囲気や、重苦しい空気に包まれたウィットリー家等の雰囲気は素晴らしい。顔を見せずに蚊帳の奥で蠢きながら話しかけてくるスーザンの母親の演出も不気味で怪奇映画的魅力に満ち溢れており、初監督作品ながらも手堅い作りが随所に見られる。とは言え、そこはコーマンの弟子。全体的に低予算なのは明らかで、ラストのピカピカ・カーロフには絶句すること請け合い。
それでもなお、数多のラヴクラフト原作と称する駄作の山々の中では、本作は健闘している部類である。ラヴクラフトが「色彩」と表現した未知の恐怖が、やや単純化された既知の恐怖へと置き換えられているのが残念ではあるが、これは映画的な明快さを優先させた結果かもしれない。びっくり仰天なラストのピカピカ・カーロフも含め、色々な意味で一見の価値ある佳作。
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