Dracula: Dead and Loving It (1995)
Director:メル・ブルックス
Cast:レスリー・ニールセン / メル・ブルックス / ピーター・マクニコル / エイミー・ヤスベック
Production Company:ゴーモン
監督メル・ブルックス、主演レスリー・ニールセンと来ればお分かりの通り、本作はドラキュラを主題としたコメディ映画である。吸血鬼のコメディ映画の傑作と言えばポランスキーの『吸血鬼』(1967)と『ドラキュラ都へ行く』(1979)が筆頭に挙がるかとは思うが、本作もなかなかマニアックなパロディ作品として健闘している。
まず、本作がパロディのベースとしているのはあくまでユニヴァーサルの『魔人ドラキュラ』(1931)である。そこにハマーの『吸血鬼ドラキュラ』(1958)やポランスキーの『吸血鬼』、コッポラの『ドラキュラ』(1992)の要素が散りばめられているといった程度。時々、コッポラ版のパロディと紹介されている方を見受けるが、それは如何にドラキュラ映画を観ていないかを露呈する行為である。そういう意味では、本作は『ヤング・フランケンシュタイン』(1974)の延長線上にある作品なのである。
レスリー・ニールセンの訛った英語は勿論ベラ・ルゴシのパロディであり、ピーター・マクニコルのレンフィールドはドワイト・フライ。冒頭の馬車にはじまり、レンフィールドが最初に辿り着く村の構造や村人達の振る舞い、蜘蛛の巣が張り巡らされたドラキュラ城大ホールやレンフィールドが転げ落ちる階段のセット等、至る所にまで『魔人ドラキュラ』を強く意識した演出やセットが使用されている。加えて、ルーシーの退治シーンは『吸血鬼ドラキュラ』、ダンス中に鏡に映らぬことで正体が発覚する流れは『吸血鬼』と、本作をコッポラの『ドラキュラ』のパロディ映画としてのみ視聴するには余りに勿体ないほどのドラキュラ映画のパロディが随所に盛り込まれている。
しかし、メル・ブルックスとジーン・ワイルダーの才能が神がかり的に絶妙なバランスで融合した『ヤング・フランケンシュタイン』と比較すると、本作はやや低調な感が否めない。まず脚本や基本構成がベースとした『魔人ドラキュラ』に引きずられすぎており、コメディ映画としての勢いが失われている点が痛い。それ故か、レスリー・ニールセンの笑いも空回りしており、ZAZと組んだ傑作『フライング・ハイ』(1980)や『フライング・コップ』(1982)と比較すると、元ネタが分からなくてもとにかく面白いという次元には達していないのが何とも残念な作品である。本作を視聴するならば、上記にあげた元ネタの各作品は当然のこととして、是非とも『魔人ドラキュラ』を10回以上は観てから臨んで頂けたらと思う。
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