The Lord of the Rings: The Return of the King (2003)
Director:ピーター・ジャクソン
Cast:イライジャ・ウッド / イアン・マッケラン / ヴィゴ・モーテンセン / クリストファー・リー
Production Company:ニューライン
かつてないほどの壮大なスケールで描かれた『指輪物語』三部作の最後を飾る『王の帰還』。長い旅は遂に終わりを迎え、安堵感を覚えると同時に、物語が終わってしまうことに対する一抹の寂しさを覚えるのは、決して私だけではないだろう。
本作『王の帰還』は三部作の最後を飾るに相応しく、圧倒的な映像のオンパレードである。原作では第二部『二つの塔』で登場したシェロブにはじまり、死者の道を行くアラゴルン一行、ミナス・ティリスを巡る決戦、そして滅びの山へ向かうフロド達一行。これでもかと言わんばかりの圧倒的スケールの映像で原作の持つイメージを極力損なうことなく描き切ったこの一連の超大作は、間違いなくピーター・ジャクソン生涯を通じての最高傑作として後世に残るものとなるだろう。ここまでの世界的規模でファンがいるアダルト・ファンタジーに真摯に正面から取り組み、成し遂げた監督に対する感謝の念は計り知れないものがある。
とは言え、脚本の一部展開に大きな違和感があったことも事実である。フロドとサムの信頼関係の崩壊、そしてサムの追放という衝撃の展開に、私は余りの驚きと怒りで言葉を失った。前作の『二つの塔』でも違和感を感じた部分ではあったが、フロドが余りに指輪に侵食されるのが早すぎ、支配されすぎている。これでは、原作ではガンダルフやエルロンドといった賢者のようになっていくフロドの秘めたる強さが全く見えてこない。
また流石に三部作を通して観ると、感情を揺さぶるシーンで幾度も繰り返される無音のスロー演出も単調でしつこさが鼻につく。しかし、それでもなお、ピーター・ジャクソンによる『指輪物語』三部作は、永遠に歴史に名を刻むことになるであろう素晴らしい超大作であったと思う。トールキンによる原作は勿論だが、『指輪物語』を凌駕する作品は最早私が生きている間には登場することがないのではなかろうか。
なお、スペシャル・エクステンデッド・エディションではクリストファー・リー演ずるサルーマンが原作とは異なり串刺しとなる最期を迎える。勿論これは、『スター・ウォーズ:エピソードIII - シスの復讐』(2005)でドゥーク伯爵を演じたリーが十字架状に組み合わされたライトセイバーで斬首されるのと同様、リーがドラキュラ俳優であることに敬意をはらった「遊び」である。
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