Island of Lost Souls (1933)
Director:アール・C・ケントン
Cast:チャールズ・ロートン / リチャード・アレン / キャスリーン・バーグ / ベラ・ルゴシ
Production Company:パラマウント
過去に幾度か映画化されているH・G・ウェルズの『ドクター・モローの島』の最初の映画化作品。後年に制作されたものはいずれもSF色が強いのに対して、本作は怪奇映画然とした雰囲気が濃厚なのが特徴であり、モノクロの画面も手伝って全体的におどろおどろしい印象を受ける作品。
最初の映画化作品である本作は、モロー博士を演ずるチャールズ・ロートンの存在感が素晴らしく突出している。慇懃無礼な薄ら笑いや、ぬらぬらした存在感を放つその姿は、何とも言えぬ生理的な嫌悪感すら抱かせる。アカデミー男優賞受賞の名優の面目躍如といったところであろうか。加えて彼が生み出した獣人達は、稚拙なメイクがかえって半人半獣の奇形ぶりを印象付けており、まさに「怪奇映画」と呼ぶに相応しい、じめっとしたいかがわしさを漂わせている。
また、ラストの獣人達がモロー博士に詰め寄るシーン等もぞっとするほどの雰囲気を生み出しており、モロー博士の悲鳴が耳から離れない。ヒステリックな笑い声とも取れるその悲鳴は、モロー博士の最期が画面に映し出されないからこそ想像を掻き立て恐怖を煽ることに成功している。メスを手にした獣人達に押さえつけられ、博士は一体どんな最期を遂げるのか。これぞ古典怪奇映画の醍醐味!愛すべき名演出である。
なお、獣人達の一人に「法の番人」と称される比較的知性の高い獣人がいるのであるが、それを稀代のドラキュラ俳優ベラ・ルゴシが演じている。その特徴ある声、鋭い眼差しは健在であるものの、顔中を毛で覆われており一見しただけではそれとは分からない。このあまりなキャスティングは僅か一年前にドラキュラとして一枚看板を演じたルゴシの役者としての早い没落を感じさせ、我々怪奇幻想の愛好家を複雑な心境にさせる・・・。
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