The Bride of Frankenstein (1935)
Director:ジェームズ・ホエール
Cast:ボリス・カーロフ / コリン・クライヴ / エルザ・ランチェスター / ヴァレリー・ホブソン
Production Company:ユニヴァーサル
ユニヴァーサルが『フランケンシュタイン』(1931)に続いて制作した、ボリス・カーロフ主演のフランケンシュタイン・シリーズ第2弾。前作ではただ唸るだけであった怪物が、本作ではメアリー・シェリー原作の設定により近づいて、怪物が知性を持ち言葉を発するようになる。
世間では、前作よりもこの『フランケンシュタインの花嫁』(1935)の方が評価が高く、確かに冒頭のメアリー・シェリーの語りから始まる続編としてのスムーズな展開や、プレトリウス博士が見せる小人達の合成技術の素晴らしさ、怪物の花嫁の奇抜なデザインセンス等、前作以上に素晴らしい点が多々見受けられる作品である。
だが、そんな世間の評価とは裏腹に、私は『フランケンシュタインの花嫁』をあまり気に入っていないのである。というのもまず随所に見られる微妙なコメディ・タッチ、特にキーキー煩いバアさんが私は気に入らない。このキーキー煩いバアさんは、監督であるジェームス・ホエールの『透明人間』(1933)でも同様なキャラクターで顔を出しており、ここでもキーキー猿のように喚き、怪奇映画の品格を落とすのに貢献している。そして、最も重要なのがカーロフ演ずる怪物のメイクが明らかに前作よりも柔和な表情となっている点である。
私にとってフランケンシュタインの怪物のイメージは、前作で暗闇よりぬっと出でたカーロフの無表情でうつろな眼差しのそれであり、死人から作られたことを嫌が上にも実感させる不気味さ、そしてうつろな目の奥底に潜んでいる人間への憎しみがなくてはフランケンシュタインの怪物ではないのである。いくら原作の設定に近づいたとは言え、やはり怪物は喋ってはいけないのである。ちなみにユニヴァーサルが制作したフランケンシュタイン・シリーズは全部で『フランケンシュタイン』(1931)『フランケンシュタインの花嫁』(1935)『フランケンシュタイン復活』(1939)『フランケンシュタインの幽霊』(1942)『フランケンシュタインと狼男』(1943)『フランケンシュタインの館』(1944)『ドラキュラとせむし女』(1945)『凸凹フランケンシュタインの巻』(1948)と8作品も存在するが、怪物が喋るのは唯一本作品だけである。但し、本作品以降に連発されるシリーズはもはや形骸化したただの「シリーズ」でしかなく、怪物が喋らないとはいえそれは単なる1作目の怪物がキャラクター化したに過ぎないのではあるが。
とはいえ私の好みはかなり偏屈であるので、世間の評価に従うならば、前作以上に一般の方が楽しめる、いわゆる娯楽的な怪奇映画としての完成度は本作は非常に高い。シリーズ4作目以降は怪物を演ずる役者が様々変わりながら制作されていくが、何と言ってもカーロフの怪物が最も品格を持っている。多少怪奇映画に理解のあるレンタル・ビデオ屋であれば置いてある可能性も高い作品であるので、前作と合わせて見ることをお薦めする、怪奇映画の古典的名作である。
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