The Mummy's Hand (1940)
Director:クリスティ・キャバンヌ
Cast:トム・タイラー / ディック・フォラン / ウォーレス・フォード / ペギー・モラン
Production Company:ユニヴァーサル
ボリス・カーロフが主演した『ミイラ再生』(1932)のセミ・リメイク的な位置付けの作品。ユニヴァーサルが生み出した唯一のオリジナル・モンスターであるこのミイラ男はこの後シリーズ化され、本作をベースとして3作品が作られることとなる。
カイロの市場でアナンカ王女の墓を示す古い陶器を手に入れたスティーブは、カイロ美術館の仲間と共に発掘調査に乗り出す。調査は進みやがてミイラが発掘されるが、それは王女のものではなく、男性のミイラであった。このミイラこそ、3000年前にアナンカ王女を甦らさんとして生きたままミイラにされた高僧カリスであり、王女の墓を守る墓守によってカリスは再び息を吹き返し、調査隊一行に襲いかかるのであった。
前作で強烈な印象を与えた包帯姿のカーロフがもっと暴れてくれたらなあ!という我々の願望を汲み取ってか、『ミイラの復活』(1940)以降のミイラ・シリーズでは、その設定に大幅な変更が加えられた。『ミイラ再生』では無数の皺に覆われながらも人間と変わらぬ状態まで再生し、自らの意思を持っていたミイラ男は、本作以降、包帯姿のままで墓守によって操られる存在となるのである。この変更によって、ミイラ男はただ命じられるままに殺戮を繰り返す怪物へと成り果て、初作の持っていた格調の高さや幽玄的な儚さは失われることとなってしまった。
この『ミイラの復活』でミイラ男カリスを演じたのはB級活劇出身のトム・タイラーで、初作のボリス・カーロフ同様のメイクに加えて、フィルム撮影後に目を黒く塗りつぶす処理が加えられている。この片腕を吊り、片足を引きずるスタイルは以後ミイラ男のスタイルの定番となり、悪夢的なイメージを生み出すことに成功した。まさに、ゾンビに代表される甦る死体の恐怖の原点こそは本作のミイラに求められる、と言えるだろう。
随所に見られるユーモラスな演出が、怪奇映画としての趣をそぐ感はあるものの、この後に続く低予算みえみえのユニヴァーサル・ミイラ・シリーズに比較すると、本作は充分に見ごたえのある作品である。機会があったら是非とも見て頂きたいミイラ映画の定石を築き上げた作品。
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