The Leopard Man (1943)
Director:ジャック・ターナー
Cast:デニス・オキーフ / ジーン・ブルックス / マーゴ / イザベル・ジュウェル
Production Company:RKO
『キャット・ピープル』(1942)、『生と死の間』(1943)に続くヴァル・リュートン製作、ジャック・ターナー監督のコンビによるRKOホラー。『キャット・ピープル』で見せた暗示的なショットの積み重ねや、『生と死の間』で素晴らしく効果をあげていた音の演出といったRKOお得意の技法が本作でも随所でみることができる。
ナイトクラブのショーでデビューを飾ろうとするキキは宣伝係ジェリーのアイディアで黒豹と共に登場する。しかし、ふとしたはずみで黒豹は夜の街へと脱走し、行方をくらましてしまう。街の人々が黒豹に怯える中、警察の捜索も虚しく一人、また一人と黒豹の犠牲者が増えてゆく。責任を感じ黒豹の行方を追うジェリーは、やがてこの一連の事件は黒豹の仕業に見せかけた人間の犯行なのではないかと疑念を抱き始める。
本作は何と言っても第一の犠牲者となる少女の描写が恐ろしく秀逸である。街へ逃げ出した黒豹に怯えながらも、母親に言いつけられお使いに出かける少女。暗闇のガードをくぐり、何とかお店へと着く。そして帰り道。再びガードに差し掛かると、暗闇に浮かび上がる二つの丸い光。突如ガードの上を通過する列車の轟音、その後の悲しい結末。この一連の演出のためだけに本作を観る価値は十分にあると言える。まさにRKOの真骨頂ここにあり、である。
とは言うものの、本作はコーネル・ウールリッチの推理小説『黒いアリバイ』を原作としているため中盤から推理サスペンスのような展開となる一方で、その謎解きの説明不足な点やサイコ要素を持つ真犯人の魅力のなさが残念でもあり、前2作と比較するとやや低調な感は否めない。
なお本作に登場する黒豹は、『キャット・ピープル』にも登場した黒豹の「ダイナマイト」である。
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