Bride of the Monster (1955)
Director:エド・ウッド
Cast:ベラ・ルゴシ / トー・ジョンソン / ロレッタ・キング / トニー・マッコイ
Production Company:ローリング・M
「史上最低の映画監督」として悪名高いエド・ウッドが、晩年のベラ・ルゴシを主演に制作した怪奇映画。「史上最低の映画監督」という肩書きに相応しく余りにいい加減で矛盾を孕む脚本、商業映画というレベルにすら達していない演出や出演者の演技等、指摘すればキリがない程の酷い内容はB級を通り越してZ級とすら言える。
人々が次々と沼で行方不明となる事件が起こる。沼に潜む怪物の仕業と噂される中、新聞記者のジャネットは沼のほとりに住むヴォーノフ博士を疑い、彼の屋敷へと単身乗り込むことにする。しかし、ヴォーノフ博士こそは放射線によって超人を作り出す研究によって祖国を追われたマッド・サイエンティストだった。
ティム・バートンの『エド・ウッド』(1994)によって過剰にロマンティックに描かれたエド・ウッドであるが、その実、彼の作品は悶絶する程に酷く見るに耐えかねるものである。その余りの酷さ故にカルト的な人気を博してはいるが、個人的には彼の作品は映画と呼ぶには躊躇を覚えざるを得ない。途中代役に切り替わるために身長が唐突に高くなるヴォーノフ博士、動かぬタコの人形に自ら絡まってもがき悲鳴を挙げる犠牲者達、明らかに昼間の撮影でありながら夜と言い張る出演者達といった数々の腰砕けな演出は余りに有名。また、主役を務めるロレッタ・キングとトニー・マッコイは、映画完成のための出資者達であり勿論ズブの素人である。
そんな映画とすら呼べぬZ級映画である本作を当サイトが取り上げるのは、これが私が最も愛する怪奇俳優であるベラ・ルゴシの事実上の遺作であるからに他ならない。当時重度のモルヒネ中毒となっていたルゴシが、自らを追放した祖国への恨みを語るシーンは間違いなく彼の晩年の名演の一つである。その迫真の演技は『魔人ドラキュラ』(1931)で怪奇俳優としての地位を登りつめながらもボリス・カーロフにその座を奪われ、自らの才能を発揮することのできなかった彼の人生を想起させ、涙なくしては観る事ができない。本作の価値、それはこのルゴシの独白シーンのみにある、と言い切って構わないだろう。
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