The Quartermass Experiment (1955)
Director:ヴァル・ゲスト
Cast:ブライアン・ドンレヴィー / リチャード・ワーズワース / ジャック・ワーナー / マルジア・ディーン
Production Company:ハマー
イギリスの映画製作会社、ハマー・フィルムが怪奇映画の方向性へと進むきっかけとなったSF怪奇映画の古典的名作。1953年からBBCで放映されていた人気番組の映画化ということもあり、『原子人間』(1955)は当時のハマー・フィルム最高の興行成績を収め、『宇宙からの侵略生物』(1957)、『火星人地球大襲撃』(1967)と続編も制作されている。
クォータマス博士ら国防省が打ち上げた実験用ロケットが、試験飛行中にコントロールを失いイギリスの片田舎に墜落する。しかし、事件の関係者らが見守る中、墜落したロケットから現れたのは錯乱状態の飛行士ヴィクター唯独りだった。残る2名の飛行士の姿は船内に見当たらず、クォータマス博士らはヴィクターを病院に収容し、その様態を見守るがヴィクターの体は宇宙からの生物により変化が生じ初めていた・・・。
ヴァル・ゲスト監督によるテンポが良くリアリティ溢れる演出により、本作は低予算な古典的SFでありながらも最後まで一気に見せるだけの力を持った名作である。公開当時「フランケンシュタインの最も正当な末裔」と評されたことからも分かる通り、科学の進歩の為ならば犠牲を厭わないクォータマス博士は、非常にフランケンシュタインとイメージが重なる。もしも、これが怪奇映画路線に転向した後のハマー・フィルムであれば、間違いなくクォータマス博士はピーター・カッシングが演じたであろうことは想像に難くない。
徐々に怪物化していくヴィクターの苦しみと悲哀や、それを退治しながらも次なるロケットの打ち上げを計画するクォータマス博士の関係は正にハマー流「フランケンシュタイン」であり、ハマーが怪奇映画路線へと進んだことは半ば必然であったと言えるだろう。特にラストのクォータマス博士の台詞は、後のカッシングへと繋がる絶妙な台詞である。
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