Horror of Dracula (1958)
Director:テレンス・フィッシャー
Cast:クリストファー・リー / ピーター・カッシング / マイケル・ガフ / メリッサ・ストリブリン
Production Company:ハマー
ベラ・ルゴシの後にドラキュラ俳優として地位を確立したクリストファー・リーのドラキュラ映画第一作にして、ハマー・フィルムの名声を不動のものとし、リーの役柄を決定せしめた、吸血鬼映画史に燦然と輝く屈指の傑作。小説家菊地秀行氏が伝奇小説を書くきっかけとなった作品としても一部では有名である。
ベラ・ルゴシが奇怪な雰囲気を濃厚に漂わせていたのに対して、リーのドラキュラはあくまで貴族的であり、ファンの間でもドラキュラ俳優はルゴシか、リーかと好みが大きく分かれるところである。私個人としては、俳優そのものの魅力としてはリーを推すが、映画全体の雰囲気等も含めれば『魔人ドラキュラ』のルゴシがやや有利ということになろうか。私にとってリーはややカッコよすぎるのかもしれない。
とは言え、リーのドラキュラとしての魅力は充分すぎるほどであり、この映画の魅力はリーその人にあるとさえ言える。ドラキュラ城のセットが『魔人ドラキュラ』に比べてチープに感じられても、それを補って余りある程リーの存在感は圧倒的であり、私のような怪奇の血が濃い人間は、リーのしぐさ一つ一つに酔いしれてしまうのである。これだけドラキュラ伯爵のイメージを強烈にアピールできる役者はおそらく今後も現れることはないであろう。
そして、その圧倒的な存在感を誇るリーに負けていないのが、ヴァン・ヘルシングを演じるピーター・カッシングである。カッシングもリーと同様怪奇映画界の大スターであり、その理知的な顔立ちから博士や教授役を数多く務めた俳優であるが、この『吸血鬼ドラキュラ』では、まさに知性の塊であるヘルシングをこの上ない魅力と共に演じている。彼の青い目に宿る知性の光は、ドラキュラと同等に対峙するだけの力を充分に我々に感じさせ、ドラキュラにとってはこの上ない強敵としてその存在を示している。原作に比較して、映画の脚本はヘルシングとドラキュラの対決が主軸になっていることも手伝って、カッシング演ずるヘルシングはドラキュラに勝るとも劣らぬ魅力的なキャラクターとなっているのである。
この『吸血鬼ドラキュラ』は、リーとカッシングという怪奇映画界の二大スターを得た時点で、充分すぎるほど魅力溢れる作品なのであるが、この映画はテンポや演出等も非常に優れた作品である。アクション性が高められ、テンポ良く進められるストーリーは一気に最後まで見せるだけの力を持ち、役者だけで満足してしまう私のようなマニア以外でも確実に楽しめるということができよう。決して見て損はしない傑作である。
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