Caltiki - il mostro immortale (1959)
Director:リカルド・フレーダ
Cast:ジョン・メリベール / ディディ・ペレゴ / ジェラルド・ヘルター / ダニエラ・ロッカ
Production Company:ガラテア
『血ぬられた墓標』(1960)の監督で知られるマリオ・バーヴァがカメラマン時代に撮影を担当したSF怪奇映画。怪獣映画の文脈で語られることも多い本作であるが、『血ぬられた墓標』同様にバーヴァの陰影の強いモノクロで怪奇ムードたっぷりに描かれる映像は、明らかに怪奇映画の文脈で語るべき作品である。
古代マヤ文明の遺跡を調査していたフィールディング教授達は、遺跡で現地の人々がカルティキと恐れる不定形の生物に襲われる。片腕をカルティキに飲み込まれ浸食されたマックスは、徐々に理性を失っていってしまう。彼を救うべくこの不定形生物の分析を進めるフィールディング教授らは、カルティキが放射線で活動を活発化し増殖することに気づく。そんな中、放射能を発する彗星が1342年ぶりに地球へ近づこうとしていた。
本作『カルティキ 悪魔の人喰い生物』(1959)はハマーの『原子人間』(1955)と『怪獣ウラン』(1956)の影響を強く受けた作品である。マックスが片腕を侵食されてしまうくだりは『原子人間』のヴィクターそのものであるし、カルティキが巨大化していく様は『怪獣ウラン』と、まさに「美味しいとこどり」な構成となっている。しかし、ハマーのそれらがいかにもイギリスらしい理屈っぽさで古典怪奇SF映画としての体裁を整えているのに対して、本作はマヤ文明の神というおどろおどろしい設定やバーヴァのフィルムノワールを思わせる撮影と演出で、より怪奇映画的な仕上がりとなっている。
巨大化前のカルティキがどう見てもただのボロ布にしか見えない点や、ミニチュアを使った撮影がはっきりそれと分かってしまうのは御愛嬌。それでも人を襲わんと不定形の塊のカルティキが屋敷の中を蠢き徐々に迫ってくるさまは十分におぞましく、人を飲み込み溶解する描写はグロテスクで恐ろしい。怪奇映画的アプローチとしての古典SF映画の佳作である。
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