Psycho (1960)
Director:アルフレッド・ヒッチコック
Cast:アンソニー・パーキンス / ジャネット・リー / ジョン・ギャヴィン / ヴェラ・マイルズ
Production Company:シャムリー
1957年に逮捕されたエド・ゲインの実際の猟奇殺人事件に基づく、ロバート・ブロックの同名小説をヒッチコックが映画化した映画史に残る傑作。本作は、それまで医学用語でしかなかった「サイコ」という言葉を世俗化し、さらにはサスペンス映画の一ジャンルとしても確立した程の強い影響力を持った作品である。
不動産会社に勤めるマリオンは仕事で大金を預かり、ほんの出来心からその大金を横領してしまう。恋人の下へと向かう最中、「ベイツ・モーテル」という寂れたモーテルに辿り着いた彼女はそこで一夜を過ごす。病身の母親の面倒を見ながらモーテルを経営する好青年ノーマン・ベイツとの会話の中で自首を決意する彼女であったが、部屋でシャワーを浴びていた最中、何者かの影が彼女に襲いかかるのであった。
もはや未見の方がいるとは思えないが、一応衝撃の結末は伏せて紹介をすることにしよう。緻密に計算されつくされたヒッチコックによる演出とバーナード・ハーマンによるスコアは、全編を通じて観る者の胃をキリキリと締め付ける程の高い緊迫感を与えてくる。マリオンが車を買い替える際のやりとり、ベイツと探偵のやりとり、そして衝撃の結末。現代のサスペンス映画に見られる手法の大半はこの映画で生み出された、といっても過言ではないだろう。
本作の強烈な印象もあって、ノーマンを演じたアンソニー・パーキンスはサイコ系の演者の代表格となり、『サイコ』シリーズ4作品の他にも、同様な演技を求められる役回りにその役者人生を費やされることになる。一方、マリオンを演じたジャネット・リーは、80年代前半に何作品ものホラー映画に出演しスクリーム・クイーンと呼ばれたジェイミー・リー・カーティスの実の母親である。
なお、本作はガス・ヴァン・サント監督によって、脚本から演出からカット割りからと何から何までヒッチコックと同じ『サイコ』(1998)としてカラーでリメイクされた。しかし、そこまで同じにするなら、何故わざわざリメイクする必要があるのか?という大きな疑問を生み出し、98年版はゴールデンラズベリー賞の最低リメイク賞と最低監督賞を受賞するに至り、名作に泥を塗る形となった。
amazonでこの映画を検索