Psycho III (1986)
Director:アンソニー・パーキンス
Cast:アンソニー・パーキンス / ダイアナ・スカーウィッド / ジェフ・フェイヒー / ロバータ・マクスウェル
Production Company:ユニヴァーサル
シリーズものは前作を超えることがない、という悲しき定石を踏んだシリーズ第3作目。前作『サイコ2』(1983)の成功を受け、本作ではアンソニー・パーキンス自らメガホンを取ったものの、初作の完成度はおろか前作の完成度にも程遠い、セルフ・パロディのような作品となっている。
本作の失敗は、まずヒロインを演ずるダイアナ・スカーウィッドの魅力の低さにある。ブロンドのショートヘアという出で立ちこそは初作のマリオンを想起させはするものの、ジャネット・リーほどの華やかさがないため劣化版の印象が拭えない。加えて脚本も一本調子でよろしくない。前作ではノーマンの狂気か陰謀か、といった捻りが加えられていたのに対して本作ではただただ連続殺人を犯すだけとなっているため、よりパロディ感が増してしまっている。
しかし、本作はノーマン本人視点で物語を見た場合、意外と彼は周囲に恵まれ愛されているということに気が付く。前作に引き続き登場する保安官やレストランのマスターはノーマンを信じ、周囲を嗅ぎまわる女性ジャーナリストから彼を守ろうとさえしてくれる。また、ヒロインのモーリーンもノーマンの素性を知り一度はモーテルを離れるものの、ノーマンを信じ戻ってくる。
この点においてだけは、私は本作を高く評価する。社会から拒絶されがちな立場の者に対して、本作の登場人物たちはとても心優しい。ノーマンはとても人に恵まれている。だが、それ故に前作のラストで狂気に支配されてしまったノーマンの殺人はその温かい信用を裏切ることになってしまい、もの悲しい。まさに本作の最初の台詞であるモーリーンの言葉通り「神など存在しない!」のである。
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