The City of the Dead (1960)
Director:ジョン・モクシー
Cast:デニス・ロティス / パトリシア・ジェッセル / クリストファー・リー / ベネチア・スティーブンソン
Production Company:ヴァルカン
後にハマーと並ぶイギリスの怪奇映画会社アミカスを設立することになる、ミルトン・サボツキーとマックス・ローゼンバーグが製作した魔女狩りを主題とした怪奇映画。低予算ながらもモノクロでムードたっぷりな本作は、隠れた名作と評価も高い。
大学で黒魔術の歴史を講義するドリスコール教授は、魔女狩りの歴史に興味を持つ女子学生ナンに、1692年に起こった魔女狩りの土地であるマサチューセッツ州のホワイトウッドを訪れることを勧める。休暇を利用してホワイトウッドを訪れるナンであったが、やがて彼女の消息が途絶えてしまう。失踪した妹を捜すため、兄のリチャードもホワイトウッドへと向かうが・・・。
本作『死霊の町』(1960)の舞台となるホワイトウッドは、濃い霧に覆われた忘れ去られた街である。地面一面を覆い隠す程の霧は、足元にしか漂っていない辺りに映画としての見せ方の工夫が今一歩な感はあるものの、それでも充分に怪奇的なムードを高めている。さらには、クリストファー・リーすらをも従えて、圧倒的な存在感を見せ付けるパトリシア・ジェッセルの不気味な演技。やはり、怪奇映画にはこういった単純ではあるが雰囲気作りの積み重ねこそが重要な要素であり大切なのだと、改めて実感させられる。
ヒロインと思われる女性の映画途中での失踪や、失踪の舞台となる場所が寂れたモーテルやホテルといった宿であること、その後兄弟が捜索に乗り出す点、等が同年の『サイコ』(1960)の構成と同一であるため、『サイコ』をパクっていると指摘する方が非常に多いが、実際には本作『死霊の町』の方が『サイコ』よりも制作開始時期は1ヶ月早い。とは言え、ロバート・ブロックの原作小説は1959年時点で既に出版されているため、ブロックの小説自体から着想を得た可能性は否定できないのではあるが。いずれにせよ、本作は怪奇映画としての濃厚な雰囲気を楽しむことの出来る、隠れた名作と言えよう。
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