The Fall of the House of Usher (1960)
Director:ロジャー・コーマン
Cast:ヴィンセント・プライス / マーク・ダモン / マーナ・ファーイ / ハリー・エラーブ
Production Company:AIP
B級映画の帝王、ロジャー・コーマンがAIPでヴィンセント・プライスを主演に据えて制作した一連のポオ・シリーズの第一弾。原作は言わずもがなではあるが、ポオの代表作の一つ「アッシャー家の崩壊」をリチャード・マシスンが脚本化している。本作の成功によりコーマンのポオ・シリーズは全8作まで制作され、ヴィンセント・プライスはポオ・シリーズの「顔」として以降も続けてシリーズの主役を数多く務めることとなる。
アッシャー家の当主ロデリックを演ずるヴィンセント・プライスは当時49歳。流石に年老いた感は否めないが、日の光を長年浴びずに色素の抜けた雰囲気を出すために髪を脱色し、白いメイクを施したその存在感は唯一無二である。聴覚神経が過敏になっているために押し殺したように喋る演技も素晴らしく、リーやカッシングといったイギリスを代表する怪奇俳優に引けを取らぬ演技でポオの世界の住人を見事に演じている。
また、ヴィンセント・プライスの演技を支える、ダニエル・ハラーによるセットも雰囲気を高めるのに大きな役割を果たしている。明らかな低予算映画でありながら、一見それと感じさせないゴシック調の家具類やセットは、時に過剰な絢爛さを印象付けるが、ダニエル・ハラーのセットはロジャー・コーマンのポオ・シリーズに欠かすことの出来ない重要な要素として位置付けることができるだろう。
なおラストで焼け落ちるアッシャー家は、農家の納屋を燃やした映像であり、以後のポオ・シリーズで何度も流用されることになる。何故石造りの屋敷が燃える際に木造となるのか、という文字通り「火を見るよりも明らか」な整合性を無視し、さらにそれを流用し続けたロジャー・コーマンは、やはり愛すべきB級映画の帝王である。
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