The Haunting (1963)
Director:ロバート・ワイズ
Cast:リチャード・ジョンソン / クレア・ブルーム / ラス・タンブリン / ジュリー・ハリス
Production Company:アーガイル
シャーリー・ジャクスンの『山荘綺談』を原作とした、幽霊屋敷ものの原点にして頂点。原作者のシャーリー・ジャクスンは『山荘綺談』の他にも『ずっとお城で暮らしてる』等で女性の病んだ精神描写に固執した作家である。本作においても、不幸な生い立ち故に精神が不安定なエレナーが、徐々に精神的にヒル・ハウスに飲み込まれていく過程が屋敷そのものの存在よりも恐ろしい。
90年間に渡り祟られた幽霊屋敷として丘の上に佇むヒル・ハウスに、マークウェイ教授が数人の助手と共に科学的調査のためやってくる。助手として選ばれたのは、異常に直感の鋭いセオドア、自宅に石が降ったという奇怪な体験をしたエレナー、そして屋敷の所有者の甥であるルークの3名であった。しかし、夜毎に起こる不可思議な現象はやがてエレナーの精神を蝕んで行く・・・。
11年間に渡り病床の母を世話したため婚期を逃し、姉夫婦と同居しているエレナーは、心安らぐ「家族」や「家」を欲していた。彼女は幽霊屋敷の科学調査という異常な状況のもとそれを求め、ヒル・ハウスが自分を欲していると信じて疑わなくなる。果たして本当に屋敷が彼女に働きかけたのか、全ては彼女の妄想か。明確な答えは提示されないが、屋敷に超自然的な現象が起こったことは確かであり、異様な空間の下、精神的に不安定なエレナーが屋敷の魔力に呼応した、という解釈が最も妥当であろう。非常に背筋を寒くする、日本の怪談にも通ずる味わいを持った、怖い作品である。
ロバート・ワイズによるモノクロの映像は、陰影が強くとても重厚で重苦しい。ヒル・ハウスに立ち込める重苦しい空気感を、映像で表現したワイズはやはり只者ではない。なお蛇足ではあるが、セオドア役のクレア・ブルームは非常にクールで知的な顔立の女優であり、思いっきり私の好みであったりする。
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