The Devil Rides Out (1968)
Director:テレンス・フィッシャー
Cast:クリストファー・リー / チャールズ・グレイ / ニコ・アリギ / レオン・グリーン
Production Company:ハマー
デニス・ホイートリーの原作を元に、監督テレンス・フィッシャー、脚本リチャード・マシスン、主演クリストファー・リーの豪華布陣で描く黒魔術の恐怖。アメリカでの公開は失敗に終わったものの、本作のイギリスでの評価は高く、ハマーの傑作の一つとの呼び声も高い作品である。
オカルト学者のリシュリューと彼の友人レックスは、長らく親代わりとして面倒を見てきたサイモンが悪魔崇拝の教団に加入しようとしていることを知り、何とかして彼を救い出そうとする。そして、森林の中で行われていた入団の儀式の最中、彼らはサイモンを救い出すことに成功し、田舎の屋敷へと彼らは立て篭もる。たが、教団を率いるモカタは再び彼を教団に取り戻そうと黒魔術を操り、リシュリーとの激しい戦いが始まるのであった。
本作は本邦未公開作品であった上に、長らく国内盤リリースもTV放映もなかったため、幻の作品としてマニアの間では知られていた作品である。して、内容はどうであるかと言うと噂ほどでもない、というのが正直なところであろうか。リシュリーやモカタの人物説明がなくテンポ良く進む物語は一体モカタの目的が何であるのか、どのような教団であるのかということが余りに不鮮明である。これは『吸血鬼ドラキュラ』(1958)でのテンポの良さとは似て非なるものであり、観客はいきなり進みだす物語に困惑を覚えざるをえない。また、目玉でもある黒魔術の描写はカメラアングルや音楽、役者の演技等でカバーをしているものの低予算であることが見え見えで素晴らしい出来とは到底言いがたい。
主役の周囲を固める役者達の演技は素晴らしく、毒蜘蛛に怯える少女の恐ろしげな仕草等の手堅い演出を見せているだけにこの脚本と予算の問題は非常に勿体無い。個人的にはモカタの黒魔術に対抗するリーの迫力ある演技と、悪役を演ずることの多いリーの善玉役で充分満足のいく作品ではあるが、やはり一般的な視点からはB級作品ということになってしまうのはいたしかたない、と言ったところであろうか。
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